『だじゃれ日本一周』

だじゃれで日本を旅しているような時間

この絵本を初めて手に取ったとき、ページをめくるたびに広がる都道府県の風景が、思いがけず私の心をふわっとゆるめてくれました。
47都道府県がだじゃれで紹介されるというユーモアあふれる構成ですが、その裏には「懐かしさ」や「幼い日の記憶」が静かに息づいています。

自分にゆかりのある県のページを見つけた瞬間、「あ、ここ知ってる」という喜びが胸にあふれ、家族や友人と訪れた旅先の光景が一度に蘇りました。
読み進めるほどに、心の奥にしまわれていた大切な風景がひとつひとつ灯っていくようでした。

思い出の中の景色が、絵本の中で語りかけてくる

この絵本に描かれた日本の風景は、不思議と“懐かしい”と感じるものばかりです。
都会のビルではなく、山・畑・港町など素朴な景色が多く、まるで昔のアルバムを開いたような気持ちになります。

だじゃれに笑いながらも、心の奥では「こんなところあったな」「この雰囲気、好きだったな」と、じんわりあたたかさが広がります。
笑いとともに、静かな回想の時間が流れ出します。

誰かと一緒に読みたくなる絵本

ページをめくるたびに、「この県、誰が好きだったかな」「ここに住んでいる人は元気かな」と、人の顔を思い出します。
絵本が、人と人の記憶を結び直してくれるような感覚です。

気取らず、構えず、自然に笑える。
そんな時間は、大人になればなるほど、そして歳を重ねれば重ねるほど貴重に感じられます。

絵本紹介

『だじゃれ日本一周』

作:長谷川義史
出版社:理論社

47都道府県の名前をだじゃれにしながら紹介する、ユーモアあふれる旅の絵本です。
長谷川義史さんの描く線や色づかいには、素朴な温かさと遊び心があり、どのページからも「人と土地への愛情」が伝わります。

見開きで2つの県が紹介され、隣同士の関係性がそのままだじゃれの面白さに結びついているのも魅力のひとつです。
地理が得意でなくても、「あ、この県、ここだったんだ」と自然に理解できる工夫があります。

背景には、日本各地の山・海・畑・街並みなどが丁寧に描かれ、読む人それぞれの懐かしい記憶をそっと刺激してくれます。

笑いながら読めるのに、静かに心があたたまる。
長谷川義史さんならではの“笑いの中のやさしさ”が光る絵本です。

高齢者ギフトとしておすすめする理由

懐かしさが自然に広がる

47都道府県の素朴な絵が、昔の旅や故郷を思い出させてくれます。

笑いが気持ちを軽くする

だじゃれの軽やかさが、心の緊張をそっとほどいてくれます。

会話のきっかけが生まれやすい

「ここに行ったね」「こんなことあったね」と思い出話が広がります。

落ち着いた色づかいで読みやすい

文字と絵のバランスがよく、高齢の方にも負担なく楽しめます。

その人らしさを呼び戻す時間になる

だじゃれ好きの方には特に“自分らしさ”が輝く瞬間が生まれます。

贈り方のヒント

ゆかりの県ページに付箋を添える

「ここ覚えてる?」とわずか一言で会話が生まれます。

短いメッセージで気持ちを届ける

「あなたの笑顔を思い浮かべて選びました」と添えるだけで十分。

帰省や面会時に一緒に読む

声を出して笑える、共有のあたたかい時間になります。

まとめ

『だじゃれ日本一周』は、
笑いと懐かしさを同時に届けてくれる、心がやさしくほぐれる一冊です。

だじゃれにクスッとしながらページをめくるうちに、
自分の中に眠っていた風景や思い出がそっと顔を出し、
過去の自分と現在の自分がやさしくつながっていく感覚があります。

大切な方と一緒に読むと、自然と笑い声がこぼれ、
心の距離がふっと近づくような、不思議なあたたかさがあります。

年齢を重ねても、「誰かと笑い合う時間」は人生の宝物。
そんなことを思い出させてくれる、優しさと明るさに満ちた絵本です。

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