ムーミンの姿に自分を重ねた瞬間
この絵本を初めて読んだとき、私はムーミンの姿に自然と自分を重ねていました。
若いころの私は、自分の可能性を信じながら、できることを増やしたくて背伸びをし続けていました。人をうらやむこともあり、「私の宝物ってなんだろう」と探しながら歩いていた時期もありました。
年齢を重ねると、これまで当たり前にできていたことが少しずつ難しく感じられ、「この先、私はどこへ向かうのだろう」と立ち止まる瞬間が増えてきます。そんな自分の揺らぎがムーミンの姿と重なり、胸がきゅっとなりました。
“宝物”は外ではなく、自分の中にあると気づいたとき
ムーミンが旅の中で、外にはなかった宝物を見つけ、自分の中にずっとあった大切なものに気づいたとき、私はハッとしました。
これまでの人生の中で、誰かからもらった言葉、支えてくれた時間、小さな成功や喜びがたくさんあります。
目に見えないけれど、確かに私をつくってきたものが胸の奥にたまっていたのです。
それらは派手ではありませんが、“自分の中に静かに蓄えられてきた宝物”。
ムーミンの旅を読みながら、自分の歩みがそっと肯定されていくような感覚を覚えました。
ムーミンがくれる静かな肯定感
この絵本を開くたびに、私は「私は私のままでいい」と思えるようになります。
できなくなったことが増えても、失ったものがあっても、それでも心の中には確かに宝物がある。
ムーミンの姿が教えてくれたやさしさは、年齢を重ねた今の私に深く響き続けています。
絵本紹介
『ムーミンのたからもの』
原作:トーベ・ヤンソン
訳:松田素子
出版社:講談社
ムーミンは、自分の「たからもの」を探すために旅に出ます。まわりの仲間たちは皆それぞれに特技や誇れるものを持っていて、ムーミンはそれをうらやましく感じています。しかし旅の途中、彼が見つけたのは目に見える宝物ではなく、“ずっと自分の中にあった大切なもの”。
この絵本には、派手な冒険や劇的な展開はありません。
そのかわりに描かれているのは、たいせつなものは「誰かと過ごしてきた時間」や「心に残った気持ち」のなかにあるという、とても静かで深いやさしさです。
絵はやわらかいタッチで、ページをめくるたびに空気がふわりと明るくなるような感覚があります。ムーミンの表情には揺れる心の機微が丁寧に描かれ、読む人の気持ちとも自然に重なります。
高齢の方にとっては、ムーミンの旅が「これまで歩いてきた人生をそっと振り返る時間」にもつながり、読み終えると胸の奥にやさしい灯りがともる一冊です。
高齢者ギフトとしておすすめする理由
絵と言葉がやさしく読みやすい
やわらかい線と大きめの文字で、目に負担をかけずに楽しめます。静かな色彩が心を落ち着かせてくれる絵本です。
ムーミンの心の揺れが自分の気持ちと重なりやすい
「できなくなっていく寂しさ」「この先どう歩くのか」という感情にそっと寄り添い、読者自身の心の揺れを静かに受け止めてくれます。
人生のなかで積み重なった“見えない宝物”を思い出せる
言葉、時間、思い出――目に見えない宝物が自分の中にあることを再確認でき、今の自分をやさしく肯定する力を与えてくれます。
感情をゆっくり整えてくれる静かな物語
激しい展開がないため、読みながら心の呼吸がゆっくり整い、穏やかな気持ちに包まれます。
読後に“抱きしめられたような温かさ”が残る
ムーミンの旅の終わりが、読者の心にもほのかな灯りをともしてくれる、そんなやさしい余韻を残す一冊です。
贈り方のヒント
絵本と一緒に添えられる、やさしい一言メッセージ
そっと寄り添いたい相手へ
「あなたの歩いてきた時間には、たくさんの宝物がありました。
それを思い出すきっかけになれば嬉しいです。」
気持ちが沈みがちな方へ
「無理をしなくて大丈夫。
この絵本が、心の呼吸をゆっくり取り戻す手助けになりますように。」
会えない時間を埋めたいときに
「離れていても、あなたのことを想っています。
静かな物語が、私たちをそっとつないでくれますように。」
感謝を伝えたいとき
「これまであなたから受け取った“宝物”に、ありがとうを込めて。」
読書が負担になりがちな方へ
「絵を見るだけでもやさしい時間になります。
どうぞ気の向くままにページをひらいてください。」
まとめ
ムーミンの旅は、読む人それぞれの心の奥に眠る“宝物”を思い出させてくれます。
できなくなったことや失ったものに目が向きがちな年齢になっても、これまで積み重ねてきた優しさや思いやりは確かに自分の中に残っています。
ページを閉じるころには、
「今の自分も、悪くない」
そう静かに思えるような、あたたかい灯りが心にともります。
この絵本は、人生を重ねてきた方に、「いまの自分のままで大丈夫」と語りかけてくれる一冊です。
読み終えたあとには、心がやさしくほどけ、静かなぬくもりに包まれるような安心感が残ります。


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