『パンダ銭湯』

ページをめくる前に、すでに始まっている時間

表紙を見ながら、「お風呂屋さんだ」「行ったことある!」と、まだ読んでいないのに、ぽつぽつ言葉が出てくる。

「どんなお風呂かな」と聞くと、「ひろいんじゃない?」「あわいっぱいかな」と、それぞれの想像が広がっていきます。
読み始める前のこのやりとりが、なんだかもう楽しくて。

少しずつ、その世界に入っていくような空気がありました。

空気が動く、その瞬間に立ち会う

読み進めていくと、思いがけない展開に出会います。
一瞬だけ、し~んと静かになって、「えー!!」と声が上がって、そこから一気に笑いに変わる。
その流れが毎回同じなのに、やっぱり面白い。

びっくりして固まる子、すぐに笑い出す子、「見て見て!」と隣の子に伝える子。
同じ場面でも、反応が違うのがまた楽しい時間でした。

読んでいるこちらも、つい間をとってしまったり、子どもたちの反応を待ちながらページをめくったりして、一緒にその場にいる感じが、自然と生まれていきました。

同じ場面に、何度でも戻ってくる

少し時間がたってからでも、「あれ読んで」と思い出したように手に取られることがあります。

はじめて読んだときの驚きとはまた違って、わかっているのに笑ってしまったり、その場面を待ちながらページをめくる姿があったり。

「ここだよね」と確かめるように見る子もいて、そのやりとりがまた自然と広がっていきます。

一度きりで終わらずに、何度も同じ場面に戻ってくる、その関わり方が、この絵本らしい時間だなと感じました。

絵本紹介

『パンダ銭湯』

さく:tupera tupera
出版社:絵本館

『パンダ銭湯』は、パンダだけが入ることのできる銭湯を舞台にした絵本です。
お父さんと子どもが一緒に銭湯へ向かい、受付をすませて中へと入っていきます。

中では、体を洗うところから湯船につかるまで、銭湯ならではの流れが丁寧に描かれていきますが、そこには思いがけない“パンダならでは”の出来事が重なっていきます。

そしてこの絵本の面白さは、登場するパンダたちだけでなく、さりげなく描かれているものの中にも広がっています。
飲み物やアイス、壁に貼られたものなど、よく見るとくすっとしてしまうような遊びがちりばめられています。

物語の流れを追いながら、ふと視線を移した先にも楽しさがあり、ページの中を行き来するように味わえる一冊です。

おすすめの理由

「ほんと?」と「おもしろい」が一緒に動くから

目の前で起きていることを、そのまままっすぐ受け取る中で、少し違うことに出会ったとき、
「え?」という気持ちと、「なんかおもしろい」が一気に動きます。

『パンダ銭湯』は、その反応がとても自然に出る絵本です。
びっくりしているのに、こわくはなくて、そのまま笑いに変わっていく感じが心地いい。

“ほんとかな”“なんでだろう”“おもしろい”という気持ちを、かたくならずに動かしてくれる一冊だと思います。

いつもの感覚につながっているから入りやすい

自分の知っている流れや感覚と重なると、ぐっとその世界に入りやすくなります。

お風呂に入る、体を洗う、湯船につかる。
そうした流れが土台にあることで、無理なく物語の中についていくことができます。

遠くの出来事としてではなく、自分の感覚の延長で味わえるからこそ、その中で起きることも、しっかり楽しめるのだと思います。

安心して入っていけることが、おもしろさにつながっていく一冊です。

ひとつの発想が最後まで貫かれているから

読み進めていく中で、あるひとつの発想が、途切れることなく続いていきます。

その一貫した流れがあることで、途中で途切れることなく、その世界にすっと入り続けることができます。

「そうくるんだ」と感じる感覚が、次のページへ、また次へとつながっていき、最後までそのままの勢いで楽しめる。

ひとつの面白さがぶれずに続いていくところに、この絵本ならではの魅力を感じます。

まとめ

読み終えたあと、さっきの場面を思い出して、ふっと笑ってしまう。

「あれ、おもしろかったね」と言葉にしなくても、同じところを思い浮かべているような空気が流れます。

もう一度ひらくと、やっぱり同じところで笑ってしまうのに、前とは少し違う見方をしていることにも気づく。
何度かひらくうちに、その場面がすっかりなじんでいって、思い出すだけで楽しくなります。

閉じたあとも、どこかに残っていて、また手に取りたくなる一冊です。

🤍 この絵本について、ひとこと

一文だけでも大丈夫です。
「この場面が好きでした」 「誰かに贈りたくなりました」など、 短い言葉を残していただけたら嬉しいです。

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