『こんばんは こんばんは』

思いがけずよみがえった夜の記憶

『こんばんは こんばんは』を読んでいると、ページの中で身のまわりのものたちが静かに夜のあいさつを始めます。その光景を追っているうちに、ふと、子どもたちが幼かった頃の寝る前の時間がよみがえりました。絵本を読んでいるはずなのに、目の前には昔の布団の中の景色が重なり、声に出していた言葉が、遠い夜へつながっていくようでした。

先に眠ってしまった母の記憶

寝かしつけの途中で、自分の方が先に眠ってしまった夜が何度もありました。数分うたた寝をして目を開けると、子どもたちが静かにこちらを見ている。その光景を、『こんばんは こんばんは』のやわらかな表情のものたちが思い出させてくれました。起こされることもなく、ただ同じ時間の中にいる安心が、そこにはありました。

今になって気づく夜のぬくもり

この絵本は新しい一冊なのに、ページをめくるたびに過去の夜の感触が戻ってきます。灯りを落とす前の静けさ、並んで横になった体温、言葉が少なくなっていく時間。『こんばんは こんばんは』が描く眠りへ向かう流れが、かつて過ごした夜の記憶をそっと呼び起こしてくれました。

絵本紹介

『こんばんは こんばんは』

作:北村人
出版社:福音館書店

夜の時間、子どもが眠るまでのひとときが描かれています。おふろ、バスタオル、パジャマ、くつした、布団。眠る前に出会う身近なものたちが、「こんばんは」とやさしく迎えてくれます。

湯気の立つおふろで体をあたため、タオルに包まれ、パジャマに着替え、布団へ向かう。日常の中で繰り返されている夜の支度が、ひとつひとつ丁寧にたどられていきます。登場するものたちは、どれも穏やかな表情を持ち、次の場面へと自然につないでいきます。

ページが進むにつれて光や色合いは落ち着き、部屋全体が眠りへ近づいていきます。「こんばんは」という言葉が重なるたびに、一日の終わりを受けとめるような静かなリズムが生まれ、読む側もその流れの中へ入っていきます。

眠る前の時間に寄り添いながら、夜へ向かう安心の過程そのものが描かれた絵本です。

おすすめの理由

読む人の声がやわらかくなる

「こんばんは」という言葉を繰り返しているうちに、自然と声の調子が落ち着いていきます。物語を伝えるというより、夜の空気を一緒につくっていくような読み心地があります。読み手の緊張や一日の慌ただしさもほどけ、読み手自身が静かな時間へ入っていく感覚があります。

眠りへ向かう気持ちを整えてくれる

眠る前は、気持ちがまだ昼の延長にあることも少なくありません。この絵本は、切り替えを促すのではなく、心が少しずつ落ち着く流れをそっと支えてくれます。ページをめくるごとに、体も気持ちも自然に夜へ向かっていく感覚が生まれます。

読み終えたあとも続く安心感

読み終わって本を閉じたあと、部屋の中のものたちが変わらずそこにあることに気づきます。絵本の時間が終わっても、眠りに入るまでの空気が途切れません。布団に入ったあとも、静かに見守られているような感覚が残るところに、この絵本の心地よさがあります。

まとめ

一日の終わり、灯りを落とす前のわずかな時間。
声に出した「こんばんは」が、部屋の空気を静かに整えていきます。

眠りへ向かう流れの中で、そばにあるものたちの存在に気づくこと。
その安心は、読んでいる大人にもゆっくり広がっていきます。

ページを閉じたあとも、夜はやさしく続いていきます。
布団の中で過ごす時間が、少しあたたかく感じられる一冊です。

🤍 この絵本について、ひとこと

一文だけでも大丈夫です。
「この場面が好きでした」 「誰かに贈りたくなりました」など、 短い言葉を残していただけたら嬉しいです。

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