『ひき石と24丁のとうふ』

表紙の写真に、目が離れなくなりました

本棚に並ぶ中で、最初に心をつかんだのは、言葉よりも写真でした。

そこに写っているのは、90歳のミナさん。
ただ、豆腐を作る人の姿が、まっすぐに写っていました。

その静けさに、なぜか惹かれました。
派手さがないのに、目を逸らせない。
声をかけられているわけでもないのに、足が止まる。

この人の仕事を見たい、と思っていました。

ミナさんの姿と、手の動きが一緒に語ってくる

ページをめくると、ミナさんが写っています。
表情も、身体の向きも、道具との距離も、豆腐づくりの時間がそのまま写真になっている。

そして同時に、手の様子が目に入ります。
手の置き方、指先の迷いのなさ、動きの確かさが伝わってきます。

顔と手、佇まいと動作から、「この仕事の美しさ」がまっすぐ届きました。

「食べたい」と思ったのは、味よりも時間でした

写真を見て、素直に思いました。
この豆腐が食べたい、と。

それは味の想像というより、ミナさんの時間に触れてみたい、という気持ちに近かったです。
便利さに慣れた日々の中で、手間を省くことに迷いがなくなっていた自分が、ふと恥ずかしくなる。
でも、その恥ずかしさは責めるためではなく、「自分の暮らしを取り戻す」ための小さな合図のようにも感じました。

絵本紹介

『ひき石と24丁のとうふ』

作:大西暢夫
出版社:アリス館

この本は、岐阜県の山あいで豆腐を作り続けている90歳の女性・ミナさんの暮らしを追った写真絵本です。写真と短い文章によって構成されています。

ミナさんは、昔ながらのひき石(石臼)を使い、大豆をひき、煮て、こして、固め、一日に24丁の豆腐を作ります。

朝の準備から作業の工程、出来上がった豆腐を並べる様子まで、工程が丁寧に写し出されています。

写っているのは、作業の手順だけではありません。

石臼の重み、水の音、湯気の立ちのぼる台所、山里の空気。

道具と身体が長い時間をかけて馴染んできたことが、写真から伝わります。

ひき石と向き合いながら豆腐を作る一日の積み重ねが、そのまま一冊になっています。

おすすめの理由

器・民藝・手仕事の店に

石臼、桶、布、鍋。
道具が長く使われてきた姿が写っているこの本は、民藝や器を扱う店とよく響き合います。

棚に並ぶ器の横に立てかけるだけで、“使われている風景”が見えてきます。

物を売るだけでなく、物が働く時間まで伝えたい店に、自然に溶け込みます。

古民家カフェ、発酵や自家製を大切にする小さな飲食店に

味噌、パン、珈琲、焼き菓子。
手間をかけることを大切にしている店に、この本は合います。

写真に写る手の動きや湯気は、厨房の空気とよく似ています。

カウンターの端や待ち時間の椅子のそばに置くだけで、「作る人がいる」という感覚が、より濃くなります。

古道具・古家具の店に

長い時間を経たものを扱う店に、90歳のミナさんの姿はよく似合います。

傷や色の変化を価値として受け止める空間に、積み重ねられた仕事の写真は違和感なく置かれます。

古いものを“残す”店に、続けてきた仕事の姿を添えられる一冊です。

まとめ

石臼を回す音、湯気の立つ台所、黙々と動く手。

ひき石と24丁のとうふは、道具と人が長い時間をかけて馴染んできた姿を、そのまま写し取った一冊です。

器の棚にも、古道具の並ぶ空間にも、仕込みを大切にする厨房のそばにも、この本はよく似合います。

ものを売る場所に、ものが生まれる時間を添える。

静かな存在感で、店の世界観を、もう一段深くしてくれる絵本です。

🤍 この絵本について、ひとこと

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