見つける楽しさに、何度も戻っていく
この絵本は、上の娘のお気に入りの一冊です。
ページのあちこちに、次のヒントがそっと散りばめられていて、探し絵のように目で追う時間そのものが楽しくなります。
はじめて読んだときも、そして結末を知ったあとも、「どこにあるんだろう」と、同じページを何度も行き来していました。
物語を追うというより、家の中を一緒に歩き回っているような感覚でした。
折り紙の箱から、広がっていったこと
何層にも重なった折り紙の箱(入れ子の箱)が出てくる場面は、特に心に残ったようです。
読み終えたあと、娘はすぐに折り紙を広げ、同じように箱を折りはじめました。
うまくいかなくても、また折る。
気づけば、手先の動きが少しずつ変わっていき、いつの間にか、一円玉の4分の1ほどの大きさの箱まで折れるようになっていました。
絵本の中の一場面が、そのまま日常の時間につながっていったようでした。
灯りに包まれた、あの一場面
心に残っているのは、物語の終わりに近いページの、家の中に灯りがともる場面です。
瓦屋根の向こうにお月さまが浮かび、あたたかな明かりが、家族のいる和室をやさしく照らしています。
こたつを囲み、同じ場所に集まる人の気配に、胸の奥がほどけていく。
ページを見つめながら、自分が幼いころに過ごした、あの静かな夜の記憶が重なりました。
娘と並んでこの絵本を読みながら、灯りと月と、家族の気配に包まれた時間を、そっと思い出していました。
絵本紹介
『きょうはなんのひ?』
作:瀬田貞二
絵:林明子
出版社:福音館書店
主人公のまみこは、学校へ出かける前に、いくつもの手紙をそっと残していきます。
その手紙を見つけたお母さんは、書かれた言葉を手がかりに、台所、居間、階段、部屋の奥へと歩いていきます。
ページを進めるごとに、家の中の風景が少しずつ変わり、時間もまた、ゆっくりと流れていきます。
お母さんの行動には、まみこが考えたことや、この日に込めた気持ちを受け取りながら、それを楽しんでいる様子が重なっています。
手紙を探す動きそのものが、親子の間を行き交うやりとりとして描かれています。
絵の中には、引き出しの中、棚の上、部屋のすみずみまで、暮らしの気配が丁寧に描き込まれています。
読者は、お母さんと一緒に家の中を巡りながら、まみこの視点と、それを受け取る側の視点を行き来することになります。
物語が進むにつれて、この一日が、家族にとって大切な日であることが、少しずつ浮かび上がってきます。
最後にたどり着く場面では、それまでの時間がひとつにつながり、家の中に、あたたかな空気が満ちていきます。
家族で過ごす時間、相手を思って用意された小さな仕掛け、それを受け取る喜び。
そうしたものが、生活の風景とともに描かれた絵本です。
おすすめの理由
探す時間そのものを、親子で共有できる
手紙をたどって家の中を進んでいく流れは、読む人も自然と一緒に探す気持ちになります。
次はどこだろう、とページをめくるたび、親子の視線や気持ちがそろっていく。
物語を追うだけでなく、同じ時間を過ごしている感覚が生まれます。
行動を通して、気持ちが伝わる物語
まみこが考え、用意した仕掛けと、それを受け取るお母さんの動き。
言葉にされなくても、相手を思う気持ちが行動として描かれています。
読むたびに、気持ちは、言葉以外でも伝わることが感じられます。
暮らしの風景が、記憶とつながる
家の中の様子や、時間の移ろいが丁寧に描かれているため、それぞれの家庭の記憶と自然に重なります。
子どもには「楽しい一日」として、大人には「思い出の風景」として、同じ絵本をそれぞれの立場で受け取ることができます。
まとめ
家の中を歩きながら、気持ちを受け取り、重ねていく一日。
『きょうはなんのひ?』は、そんな時間をそっと思い出させてくれる絵本です。
探すこと、見つけること、そして、誰かの思いに気づくこと。
そのひとつひとつが、暮らしの中に自然に息づいています。
読み終えたあと、自分の家の中を、少しだけ丁寧に見渡したくなる。
そんな余韻を残してくれる一冊です。
🤍 この絵本について、ひとこと
一文だけでも大丈夫です。
「この場面が好きでした」
「誰かに贈りたくなりました」など、
短い言葉を残していただけたら嬉しいです。


コメント