『きみがうまれはひ』

昨日のことのように、浮かび上がる時間

わたしの子どもたちはみんな成人しました。
けれどこの絵本を開くと、生まれた日の空気や、抱き上げたときの重みが、昨日のことのように立ち上がってきます。
時間は確かに流れてきたはずなのに、記憶の中では、あの瞬間だけが静かに留まっているようでした。

「笑った!」と大騒ぎしていた、あの頃

新生児の口元がふっとゆるんだだけで、「笑った!」と家族みんなで顔を見合わせていたことを思い出します。
今思えば、あれは微笑と呼ばれるものだったのかもしれません。
それでも、あのとき確かに感じたよろこびや、胸の奥があたたかくなる感覚は、本物でした。

抱っこする側として、抱っこされる側として

2024年のブックハウスカフェ大賞で受賞したと知り、手に取ったこの絵本。
抱っこされて眠るペンギンの赤ちゃんの表紙に、まず心がほどけました。
抱いているペンギンは、親としても、祖父母としても、保育に関わる人としても読める存在です。
そして同時に、かつて誰かに抱かれていた自分自身の姿も、そっと重なってくるように感じました。

絵本紹介

『きみがうまれたひ』

作:なるかわしんご
出版社:株式会社イマジネイション・プラス

この絵本は、ペンギンの赤ちゃんが生まれ、誰かに抱かれながら過ごす姿を描いています。
赤ちゃんのまわりには、いつも腕があり、体を包む存在がいます。
ページごとに示されるのは、赤ちゃんのそばで起きている出来事や、その場に流れている時間です。

絵本の中では、名前や関係性は語られません。
ただ、赤ちゃんを抱き、寄り添い、見守る姿が繰り返し描かれています。
赤ちゃんは、その腕の中で眠ったり、目を覚ましたり、体を動かしたりします。
場面ごとに示される行為は、日々の中で繰り返される身近なものです。

絵と短い言葉によって、生まれたあとに続いていく時間の断片が積み重なり、赤ちゃんと、それを囲む存在との関係が、静かに描かれていく絵本です。

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おすすめの理由

大切にされてきた“事実”が、静かに残る

この絵本に描かれているのは、抱かれ、見守られてきた時間の積み重ねです。
読み進めるうちに、自分もまた、誰かの手の中で時間を過ごしてきた存在だったことが、
胸に残ります。
「大切にされてきた」という感触が、そっと浮かび上がります。

気持ちが張りつめたとき、視線をゆるめてくれる

子育ての最中や、余裕のない日々では、思いが先に立ち、言葉がきつくなることもあります。
この絵本は、何かを正そうとせず、ただ、目に入る景色をゆっくりと整えてくれます。
読み終えたあと、相手を見る距離や、声のかけ方が、ほんの少し変わるような感覚が残ります。

最後のひとことが、今の自分に届く

物語の最後に置かれた「だいすきだよ」という言葉は、これまで積み重ねられてきた時間を受け取るように、静かに差し出されています。
その言葉は、「今ここにいる自分」を支えるために置かれているように感じられます。
読み終えたとき、自分も誰かに向けて、この言葉を手渡せる存在でありたいと、自然と思える余韻が残ります。

まとめ

この絵本は、読む人の年齢や立場を決めません。
親として過ごす時間の中でも、子育てを少し離れた場所からでも、同じページが、その時の自分の位置で立ち上がります。
読み終えたあとに残るのは、誰かのそばにいること、抱くこと、そして「だいすきだよ」と言葉にすることが、確かな行為として自分の中に残る感触。
その行為が、揺るがないものだったと静かに確認させてくれる一冊です。

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