音楽とは、こういうものだと最初に示される
ページを開くと、「音楽とは何か」という問いと、その答えが書かれています。
探しながら読むのではなく、まず立ち位置をそっと教えられるような始まりでした。
これから出会う音や楽器、時代の話は、この一文の上に広がっていくのだと、自然に受け取れた気がします。
音楽は、特別になる前から人とともにあった
音楽のはじまりを読むうちに、それが娯楽や芸術として整えられる以前から、人の生活の中にあったことが伝わってきます。
祈りや集い、日々の営みの中で、音は自然に生まれ、重ねられてきた。
音楽は「あとから付け加えられた文化」ではなく、人が人であることと並走してきたものなのだと、あらためて感じさせられました。
時代と世界を行き来しながら、想像が先へ進む
世界の楽器や音楽家に触れながら、ページは大きく時代をまたいでいきます。
古い時代から現代へ、民族音楽からコンピューター音楽へ。
2011年発行という事実にふと立ち止まり、「今なら、どんな新しい音がここに加わるだろう」と
自然に想像が広がりました。
この本は、完結する図鑑というより、続きを思い描かせる一冊だと感じています。
絵本紹介
世界のミュージック図鑑
監修:リチャード・マレット/アン・マリー・スタンレー
日本語監修:神原雅之/塩原麻里
出版社:ポプラ社
この本は、音楽を知識として積み重ねるのではなく、人の暮らしのそばに置き直してくれる一冊です。
最初に示されるのは、音楽とは何か、という考え方。
そこから世界各地の音楽や楽器、音楽家へと、視野が少しずつ広がっていきます。
クラシックに限らず、古い時代の音から現代の音まで、民族音楽からコンピューター音楽までが、同じ流れの中に並んでいます。
世界の楽器は、写真とともに紹介され、形や素材を眺めているだけでも、その土地の空気や、人の営みが伝わってきます。
また、一部で触れられる音楽家の存在からは、音楽が「誰かの手を通して受け渡されてきたもの」
であることが感じられます。
おすすめの理由
音楽が、線ではなく点のように並んでいる
遠い昔の音のそばに、現代の音があり、そのあいだに、いくつもの時間が重なっています。
たまたま開いた一頁にも、その場所なりの音の気配が宿っています。
音は、ページの奥に静かに置かれています。
音のまわりにある風景が見えてくる
写真に写る楽器や人の姿は、音そのものよりも、鳴らされてきた場所や時間を連れてきます。
集まりの気配、暮らしの温度。
音が聞こえなくても、音楽のある風景が、ページの奥に広がります。
読後に、音が戻ってくる
35曲入りのCDは、読む時間の中で主張することはありません。
本を閉じたあとや、別の日に、ふと思い出したように音を流すと、さっきまで読んでいたページが、音をまとって戻ってきます。
読書が終わったあとも、この本は、静かに続いていきます。
まとめ
この本を読み終えたあと、「音楽を知った」という感覚よりも、世界のあちこちに、まだ名前のついていない音が静かに存在しているように感じました。
図鑑でありながら、すべてを語り切らず、これから生まれてくる音の居場所までそっと残してくれる一冊。
音楽を学ぶためというより、音のある世界に、もう一度立ち戻るための本だと思います。


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