『さようなら プラスチック・ストロー』

ストローが消えていった日常から、私たちは何を受け取ったのか

いつの間にか、当たり前だったプラスチックのストローを見かけなくなりました。
「不便になった」という声よりも、「そういえば、なくても困らない」という感覚が静かに広がっていったことが印象に残っています。
環境問題は、急に理解できるものではありません。でも、生活の中の小さな変化が積み重なることで、私たちの感覚は確実に更新されていきました。
ストローは、世界規模の問題を“自分の手元”まで引き寄せてくれた、象徴のような存在だったのだと思います。

子どもたちと語り合った「できること」の手触り

保育の現場では、ストローを使った制作をきっかけに、環境の話題に触れることがよくありました。
今の子どもたちは、SDGsという言葉も、そのマークも、決して知らない存在ではありません。
園の中や街の中でマークを見つけ、「これはなに?」「これと同じだね」と指差し、絵本を通して、その意味を少しずつ自分の言葉で受け取っていきます。

大人が説明しなくても、「もったいない」「かわいそう」「守りたい」という感覚は、物語や絵を通して、自然に芽生えていきました。
一人ひとりにできることは小さくても、それが世界とつながっている。
その実感が、知識としてではなく、生活の感覚として育っていく時間を、何度も子どもたちと共有してきました。

ニュースでは届かないところへ、絵本が触れる

環境問題のニュースはたくさんあります。けれど、知識として理解しても、心と結びつかないことも少なくありません。
その点、絵本は違います。
説明ではなく、絵と間(ま)によって、静かに、時に直接的に、感情の深いところに触れてきます。
誰かを守ることが、自分を守ることにつながること。
そして、自分の選択が、誰かを傷つけてしまう可能性もあること。
絵本は、私たちにその関係性を差し出してくれます。
この一冊と向き合った時間は、「知る」よりも先に、「立ち止まって考える」ことの意味を思い出させてくれました。

絵本紹介

『さようなら プラスチック・ストロー』

文:ディー・ロミート
絵:ズユェ・チェン
訳:千葉茂樹
出版社:光村教育図書

この絵本は、ひとつの問いから始まります。
なぜ、ストローは「さようなら」を言われる存在になったのか。

物語ではなく、ノンフィクションとして描かれているのは、ストローという道具が歩んできた長い時間です。
約5000年前、人々の暮らしの中で必要とされ、金やラピスラズリといった素材で大切に使われていた時代から、私たちの身近な生活へと、静かに場面が移っていきます。

やがて、便利さと引き換えに「使い捨て」という選択が当たり前になり、プラスチック製のストローは大量に作られ、消費されていきました。
その先に何が起きているのか。
海や生きものたちの姿を通して、事実が淡々と、しかし確かに示されていきます。

本の後半では、「問題」を突きつけるだけで終わりません。
Reduce(減らす)
Reuse(くり返し使う)
Recycle(資源として生かす)
Refuse(断る)

という四つの視点が提示され、ストローに限らない、日々の選択へと読者の視線が広がっていきます。

私たちの暮らしと世界が、思っている以上に近い場所でつながっていることを、この絵本は、絵と構成そのものによって伝えてきます。

🌿 ご購入はこちらから
この収益は、施設への贈り物絵本として活用させていただきます。

おすすめの理由

正しさより先に、選択の「重さ」を感じてしまう

この絵本を読むと、何が正しいかを考える前に、自分が日々、どれほど無自覚に選び続けているかに気づかされます。
便利さ、慣れ、断らないこと。どれも悪意のない選択なのに、その先に誰かの負担があるかもしれない。
責められてはいないのに、視線をそらせなくなる。
その感覚こそが、大人にとっての読みどころだと思います。

「断る」という行為が、こんなにも難しかったと知る

Reduce や Reuse よりも、Refuse(断る)という言葉が、静かに胸に残ります。
相手を思うからこそ断れない場面、空気を壊したくなくて流してしまう瞬間。
この絵本は、「できていない自分」を突きつけるのではなく、断れなさも含めて、私たちの暮らしをそのまま差し出してきます。
簡単に答えが出ないところに、この本の誠実さがあります。

世界の話が、急に自分の生活とつながる

遠い海や知らない国の問題としてではなく、今日の飲み物、今日の買い物、今日の一言として、
環境の話が立ち上がってきます。
誰かを守ることと、自分を守ること。その境界が、思っていたよりもずっと曖昧だったことに気づくとき、世界は少し近くなり、同時に、責任も手触りをもって現れます。
この絵本は、その距離を縮めてしまう一冊です。

まとめ

この絵本を閉じたあと、心の中に、ひとつの映像が残ります。

それは答えでも、行動でもなく、暮らしのどこかに差し込まれた、静かな問い。

次に選ぶもの、手放すもの、見過ごしてきた関係性。
それらが、少しだけ違って見える瞬間を、この絵本は、そっと手渡してくれます。

🌿 ご購入はこちらから
この収益は、施設への贈り物絵本として活用させていただきます。
トップで絵本を探す

コメント