子どもの頃に出会っていた「三びきのこぶた」
子どもの頃、わたしが親しんでいた『三びきのこぶた』は、こぶたたちが無事に終わる結末のものでした。
オオカミは退けられ、物語は安心できるところで閉じられる。
子どもが物語の世界に入り、最後まで聞けるように整えられた形だったのだと思います。
それが「三びきのこぶた」なのだと、疑うことなく受け取って育ちました。
原作に出会い、静かに読み進められた理由
保育の短大で原作に出会ったとき、その展開に強い驚きを覚えました。
こぶたは食べられ、最後にはオオカミが鍋で煮えたぎる。
けれど、不思議なことに、怖さで本を閉じたくなることはありませんでした。
物語は淡々と進み、わたしは引き返すことなく、静かに最後まで読み進めることができたのです。
そこには、読み手の感情を煽るのではなく、出来事をそのまま語る、昔話ならではの落ち着いた語りがありました。
昔話が子どもに手渡してきたもの
大雨や火事、病気によって、人が簡単に命を落としてしまう時代がありました。
明日を無事に迎えられるとは限らない暮らしの中で、大人たちは「どうすれば生きのびられるか」を、昔話の形に込めて子どもたちに伝えてきました。
そう考えると、この物語に描かれている出来事は、ただ恐ろしいものではなく、生きる現実をまっすぐに示したものとして見えてきます。
だからこのお話は、大人のためではなく、子どもにこそ手渡され、聞き継がれてきた昔話なのだと思います。
絵本紹介
『三びきのこぶた』
イギリス昔話
訳:瀬田貞二
画:山田三郎
三びきのこぶたが、それぞれ家を建ち、オオカミと出会います。
わらの家、木の家は吹き飛ばされ、こぶたはオオカミに食べられます。
最後に残った一ぴきは、時間をかけてれんがの家を建て、オオカミを迎え撃ちます。
オオカミは煙突から入り込み、鍋で煮えたぎることになります。
出来事は淡々と語られ、途中で救いの手は差し伸べられません。
助かる命と、助からない命がはっきりと分かれ、物語は結末へ向かいます。
昔話として伝えられてきた形が、そのまま描かれています。
おすすめの理由
くり返しの中で、出来事が整理されていくから
このお話では、似た出来事が何度かくり返されます。
そのたびに結果が変わり、前の場面が次の場面につながっていきます。
強い出来事が一度きりで終わらず、流れの中に置かれていることで、子どもは物語全体として出来事を受け取っていきます。
一つの場面だけが強く残りすぎないところが、この昔話の特徴です。
こわさが「広がらずに終わる」形をしているから
この物語には、たしかに厳しい出来事があります。
けれど、その出来事がいつまでも続いたり、繰り返し強調されたりはしません。
話は先へ進み、場面は切り替わり、物語は終わりを迎えます。
こわさが残り続けるのではなく、「ひとつの話として終わる」形を持っていることが、読み聞かせる側にとっての安心につながります。
世界の一面を、そっと知らせてくれるから
この昔話は、「だいじょうぶ」「安心」という言葉では語られません。
けれど、危ないことがある世界で、どうすれば身を守れるのかを、物語の流れの中でそっと示しています。
現実を切り取ったような出来事を、そのまま子どもに向けるのではなく、昔話というかたちに包んで手渡してきたからこそ、今も読み継がれているのだと思います。
まとめ
『三びきのこぶた』は、楽しいことだけが起こるお話ではありません。
壊れる家があり、助からないこぶたがいて、危険は途中で消えてくれません。
けれどこの昔話は、残酷さを強く印象づけるためではなく、「危ないことがある世界で、どう生きのびるか」を物語の流れの中で静かに伝えています。
だからこそこのお話は、子どもを怖がらせるためではなく、現実を受け止める力を育てる昔話として、長く読み継がれてきたのだと思います。


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