「かぞく」は、ひとつの形だけじゃないと感じた時間
保育園では、「父の日」「母の日」という言い方を使わず、「かぞくの日」として行事を考えることがあります。
子どもたちの毎日の中で、いろいろなかぞくのあり方を、無理なく大切にしたいからです。
この絵本を開くと、「かぞくはこういうもの」と説明されることなく、さまざまな姿が、ページごとに並んでいきます。
順に見ていくだけで、「ひとつじゃない」という感覚が、言葉より先に伝わってくるように感じました。
絵を見て進む子どもと、立ち止まる大人
子どもたちは、出てくるかぞくの姿を否定したりすることなく、絵を見て、そのまま受け入れていきます。
一方で、読みながら立ち止まったのは、大人のほうでした。
「いつのまにか、形で考えていたかもしれない」そんな思いが、ふと浮かびます。
子どもは流れるように読み、大人は自分の中を見返す。
同じ絵本を見ていながら、それぞれに違う時間が流れていることに気づきました。
絵本紹介
『いろいろいろんなかぞくのほん』
文:メアリ・ホフマン
絵:ロス・アスクィス
訳:すぎもと えみ
出版社:少年写真新聞社
この絵本は、かぞくの姿を入口にしながら、ページを進めるにつれて、くらしの中のさまざまな場面が描かれていく一冊です。物語の登場人物を追っていく形式ではなく、見開きごとに場面が変わり、その都度、新しい場面が示されます。
絵本の中には、家の中や外で過ごす様子、がっこうやしごとに関わる場面、やすみのひのすごしかた、たべるもの、みにつけるもの、きもちなど、生活を形づくっている要素が出てきます。ひとつのテーマを長く掘り下げるのではなく、ページごとに短いまとまりとして置かれていくのが特徴です。
文章はひらがなで書かれ、各見開きに短い文が添えられています。絵は細部まで描き込まれており、場面ごとの様子が絵の情報として多く含まれています。文章量で説明するよりも、絵と短い文の組み合わせで場面を示すつくりになっています。
本全体としては、家族の姿と暮らしの場面が、順に並んでいく形で構成されています。読み進めることで、いろいろな生活の場面が一冊の中に集められていることが分かる絵本です。
おすすめの理由
人の数だけ、生活の手ざわりが描かれているから
この絵本に出てくるのは、「かぞく」という言葉だけではくくれない、それぞれの生活の様子です。
人の人数、過ごしている場所、身につけているもの、表情やしぐさ。
同じ「かぞく」という言葉の中に、まったくちがう手ざわりの生活が、ページごとに描かれています。
どれも説明されず、ただ、そこにある。
その具体さが、この絵本の特徴です。
絵の中に、時間の流れが描かれているから
この絵本では、出来事が起こったり、話が展開したりすることはありません。
代わりに描かれているのは、一日の中の時間や、人が過ごしている途中の場面です。
動きの途中、何かをしている最中、立ち止まっている時間。
どのページにも、「今」の場面が切り取られています。
その積み重ねが、一冊になっています。
最後に、ひとつの問いだけが残るから
この絵本は、場面を重ねてきたあと、最後に一文の問いを置いて終わります。
それまでに描かれてきた、いろいろな家族の姿や、暮らしの場面を振り返らせるようでいて、
何かを答えさせるわけではありません。
問いが置かれたまま、本は閉じられます。
読み終わりが、説明やまとめにならず、一文だけで終わる。
この終わり方も、この絵本の大切な特徴です。
まとめ
かぞくのこと、くらしのこと。言葉にしようとすると、少しむずかしいと感じるときがあります。
この絵本は、説明するかわりに、いろいろな場面を、ただ並べています。
どんなふうに見えるかは、開いてみてからのおたのしみ。
気になったら、いちどページをめくってみませんか。


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