『コルチャック先生 子どもの権利条約の父』

子どもを信じて、任せるということ

この絵本を読んで、まず保育のことが浮かびました。
孤児院で、子どもたちに自治を任せていたこと。
それは、管理や放任ではなく、子ども一人ひとりを信頼しているという姿勢そのものだと感じました。
大人が前に立つのではなく、子どもたちの力を信じて一歩引くことの重みが、静かに伝わってきます。

子ども同士の関係の中で育つもの

新しく入ってきた子どもの世話を、子どもたち自身が引き受けていく場面があります。
そこで育っていくのは、役割や責任感だけではなく、相手を思う気持ちや、尊敬する心なのだと思いました。
誰かに教え込まれるのではなく、関わりの中で育っていく姿が、強く印象に残りました。

最後まで、子どもたちと共にいるという姿勢

裁判の場で語られた「ゆるすこと」という言葉。
子どもたちの声を拾い、ひとつひとつを大切に言葉として残していったこと。
そして、どんな状況にあっても、最後まで子どもたちと共にあったこと。

それらのことは、子どもを一人の存在として信じ、向き合い続ける姿勢から生まれたものだったのだと思います。

その一つひとつが、子どもを見つめ続けてきた時間を、そのまま伝えているように感じました。

絵本紹介

『コルチャック先生 ― 子どもの権利条約の父』

作:トメク・ボガッキ
訳:柳田邦男
出版社:講談社

この絵本は、第二次世界大戦という不安定な時代の中で、孤児院の子どもたちと共に生きた、ヤヌシュ・コルチャックの姿を描いています。

コルチャックが大切にしていたのは、子どもを「守られる存在」としてではなく、考え、感じ、選ぶ力をもった一人の人として見ることでした。
孤児院では子どもたちに自治を任せ、話し合いの場をつくり、一人ひとりの声を、日々の生活の中で受け止めていきます。

その姿勢は、のちに「子どもの権利」という考え方へと受け継がれ、子どもの権利条約にもつながっていきます。
けれど、この絵本が伝えているのは、制度や言葉そのものではなく、子どもと向き合う日々の積み重ねです。

歴史の中の人物を描いた一冊でありながら、今を生きる私たちにも、子どもをどう見つめ、どう信じるのかを、問いかけられているのではと思います。

※残念ながら、現在販売していません。図書館でお楽しみください。

おすすめの理由

子どもを「一人の人」として見つめ続けているから

この絵本で描かれているのは、子どもを導いたり、管理したりする姿ではありません。
考え、迷い、選ぶ存在として、子どもを真正面から見つめ続けるまなざしです。
その一貫した姿勢が、読む側にも伝わってきます。

「子どもの権利条約」を、遠い言葉にしないから

子どもの権利条約という言葉は、知っていても、どこか自分の暮らしとは離れて感じられることがあります。
この絵本を読むと、その言葉が、決まりや理念ではなく、人がどんなふうに子どもと向き合うかということを考えさせてくれることを感じました。

子どもに向けられたまなざしが、ひとつひとつの場面に、静かに重なっています。

条約を理解するための絵本というより、なぜその考え方が生まれ、今も大切にされているのかを、
自然と感じさせてくれるところが、この絵本をすすめたい理由です。

大人自身の立ち位置を、静かに問い返されるから

読み進めるうちに、「自分は子どもをどう見ているだろう」と、自然と立ち止まる瞬間があります。
答えを出すことを求められるわけではなく、問いだけが残る。
その余白があるからこそ、読む人自身の立場を引き寄せながら、大人の手に残る一冊だと感じました。

まとめ

『コルチャック先生  子どもの権利条約の父』は、歴史の中の出来事を知るための絵本であると同時に、子どもをどう見つめるのかを、そっと考えさせてくれる一冊です。

子どもを信じ、声に耳を傾け、最後まで共にあることを選び続けた姿は、特別な理想としてではなく、日々の関わりの積み重ねとして描かれています。

読み終えたあと、答えよりも問いが静かに残る。
その問いを、それぞれの立場で抱えながら読み返したくなる絵本です。

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