新しい場所に立つと、いつも同じことを考えていた
引っ越しをするたびに、この場所でちゃんと暮らしていけるのか、人とうまくやっていけるのか、
毎回同じようなことを考えていました。
道の雰囲気や、近所の人の声、スーパーの並び方まで、どれも少しずつ違っていて、「ここは自分の居場所になるのだろうか」と立ち止まって考えてしまう。
でも、その不安に答えが出ることは、ほとんどありませんでした。
気づいたら、生活が先に進んでいた
安心した瞬間を思い出そうとしても、はっきりとは浮かびません。
ただ、朝が来て、洗濯をして、買い物に行って、同じ道を何度も通っているうちに、
ある日ふと、
「ここで暮らしている」
という事実だけが残っていました。
慣れた、というより、考える必要がなくなっていた。
住めば都、という言葉が、あとから静かに当てはまった感じです。
心配していたことは、ずっと後でほどけていった
子どもたちの友だち関係も、同じように心配していた時期がありました。
ちゃんと馴染めるのか、ひとりにならないか。
けれど、日々は先に進んでいき、子どもたちは自分なりの時間を重ねていきました。
ある日ふと、その心配を口にすることがなくなっている自分に気づきました。
「大丈夫だった」と思えたのは、そのずっと後のことです。
絵本紹介
『ゴリラのパンやさん』
作:白井 三香子
絵:渡辺 あきお
出版社:金の星社
ゴリラが、丘の上にパンやさんを開きます。
パンを焼き、店を整え、「いらっしゃい」と声をかけますが、最初のお客さんたちとは、なかなかうまくいきません。
声のかけ方や表情ひとつで、せっかく来たお客さんが逃げてしまうこともあります。
どうしたらいいのだろうと考えたゴリラは、自分の姿を見せずに店に立つ工夫をします。
すると、うさぎのこどもたちがやって来て、パンやさんは少しにぎやかになります。
けれど、うさぎのこどもたちが困る出来事が起こり、ゴリラは思わず姿を現して店に立つことになります。
さて、そのあと、パンやさんはどうなっていくのでしょう。
おすすめの理由
毎日、店を開けるということ
ゴリラは、毎日パンを焼き、店を開け、パンやさんとしてそこに立ち続けます。
うまくいかない日があっても、翌日もまた同じ場所に立つ。
その積み重ねが、この物語の軸になっています。
ゴリラのようすを、そばで見ていける
この絵本では、ゴリラが何を考え、どう動くのかが、ひとつひとつの場面で描かれています。
急に変わったり、すぐにうまくいったりはしません。
だからこそ、読んでいる子どもは、ゴリラのそばに立って、同じ場面を見ているような気持ちになります。
絵を見て、気づくことがある
ゴリラの表情や、まわりの動物たちの様子は、ページごとに少しずつ変わっています。
言葉を追うだけでなく、絵を見ながら「あ、さっきとちがう」と気づく楽しさがあります。
何度か読むうちに、見えてくる場面も変わってきます。
まとめ
パンを焼いて、お店を開いて、うまくいかない日もあります。
考えて、工夫して、それでもまた、ゴリラはパンやさんに立ちます。
一日で変わることはなくても、お店を続ける中で、少しずつ景色は動いていきます。
ゴリラのパンやさんの毎日を、ページをめくりながら、最後まで見届けてみてください。


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