一目ぼれから始まった出会い
この絵本は、本屋さんで一目ぼれをした一冊です。
繊細な線とやわらかな色合いがとても美しく、手に取った瞬間に心をつかまれました。ページをめくると、人間の家族とねずみの家族が対照的に描かれていて、その違いが自然と伝わってきます。読み進めるうちに、絵そのものが物語を語っているように感じられました。
読み聞かせの中で広がっていった世界
子どもたちに読み聞かせをすると、やはり夢中になって絵を見ていました。
家の中の細かな描写や、ねずみの暮らしの様子をじっと見つめ、こちらが気づかなかったところを次々に見つけては、嬉しそうに教えてくれます。読むたびに新しい発見があり、絵本の中の世界が少しずつ広がっていくのを感じました。
物語が終わったあとも、続いていた時間
読み終えたあと、女の子とねずみの関係をうらやましく思ったようで、「自分もねずみの友だちがほしい」と、家の中に穴がないか探し始める姿がありました。
大人にはないしょの世界を、子どもたちはしっかり受け取っていたのだと思います。誰かをそっと気遣う気持ちや、見えない存在とつながる感覚が、この絵本の中には確かにありました。
絵本紹介
文:ビバリー・ドノフリオ
絵:バーバラ・マクリントック
訳:福本 友美子
出版社:ほるぷ出版
大きな家に暮らす女の子と、同じ家のすみで暮らすねずみの女の子。
大きさも立場も違うけれど、朝を迎え、学校へ行き、家族と過ごす日々は、どこか似ています。ふたつの暮らしは交わらないまま、同じ時間が静かに流れていきます。
あるとき、おたがいの存在に気づいたことをきっかけに、言葉にしない関係が生まれます。家族には言えないまま、そっと送る合図や、同じ家の中で重なる気配。その積み重ねが、説明されることなく、関係として描かれていきます。
物語はそこで終わらず、次の世代へと受け継がれていきます。
同じ家で育った子どもたちが、また新しい「ないしょ」を抱えながら出会い、時間がめぐっていきます。細部まで描き込まれた絵の中で、ふたつの世界が並び、静かにつながり続ける一冊です。
おすすめの理由
見えない世界を、そのまま信じていけること
この絵本では、説明されないこと、語られないことがたくさんあります。
けれど、その「語られなさ」こそが、物語の世界を豊かにしています。見えない存在や、小さな出来事を、そのまま受け取っていいのだと、そっと背中を押してくれる一冊です。
関係が、静かに積み重なっていく描かれ方
同じ合図を送り、待ち、会う。その繰り返しの中で、関係が少しずつ育っていきます。友だちであるかどうかを決めるのではなく、一緒に過ごした時間そのものが残っていく描かれ方が印象的です。
絵の中に、物語が何層も重なっていること
家の中の様子や、ねずみの家の玄関まで描き込まれた絵には、物語とは別の時間が流れています。ページをめくるたびに、新しい発見があり、読むたびに見えるものが変わっていきます。読む人の年齢や経験によって、受け取るものが変わる絵本です。
読み終えたあと、日常につながっていく余韻
この絵本は、読み終わったところで完結しません。
物語の続きを、現実の暮らしの中で探したくなるような余韻があります。その余韻が、子どもの想像や遊び、心の動きへと自然につながっていきます。
「大人にはないしょ」が守ってくれる距離
この物語では、大人が介入しない世界が大切にされています。誰にも見せない場所や時間を共有することで、関係はより静かに、確かなものになっていきます。友だち関係にある、特別な距離感や信頼が、無理なく伝わってきます。
まとめ
同じ家の中で、それぞれの暮らしがあり、気づかれないまま重なっている時間が、ただ静かに描かれています。
見えないけれど、確かにそこにあるもの。
言葉にしなくても続いていく関係。
子どもは子どものまなざしで、大人は大人の距離で、それぞれに違うものを受け取りながら、
この絵本と出会っていくのだと思います。
『ないしょのおともだち』は、そんな余白ごと、そっと手渡してくれる絵本です。


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