“言えたはず”が言えなくなるおかしさ
この絵本は、私が小学校で働いていた頃、おたよりで紹介した一冊です。
そのとき図書室では、子どもたちが競うようにして早口ことばを読み合い、笑い声が絶えませんでした。
私も一緒に挑戦して、確かにその頃はすらすらと言えていたはずなのに、今あらためて開いてみると、まったく口が回らなくなっていて驚きました。
「言えない!」が、だんだん楽しくなる
でも、その「言えない!」がおもしろいのです。
お気に入りのチャウチャウのページだけは言えるようになりたくて、ついブツブツ練習してしまう。
“できそうでできない”という絶妙な距離感が、何度も挑戦したくなる気持ちを引き出してくれます。
失敗も笑いに変わる時間
早口ことばは、うまく言えなくても大丈夫。
噛んでしまったり、言い直したりするたびに、まわりから笑いが起こり、また次に挑戦したくなります。
できなかったことを責める空気はなく、「もう一回やってみよう」が自然に生まれる。
そんな前向きな時間が、この絵本のまわりには流れていました。
絵本紹介
『十二支のはやくちことばえほん』
作:高畠純
出版社:教育画劇
十二支の動物たちが、テンポよく、ユーモアたっぷりに登場する早口ことば絵本です。
ページを開くと、シンプルなのにクセになるリズムの言葉が並び、思わず声に出して読みたくなります。すらすら言えそうで言えない、その絶妙な“ひっかかり”が楽しく、読む人の心を一瞬でつかみます。
高畠純さんの絵は、大胆な線とやわらかなユーモアが特徴で、動物たちの表情やしぐさから“ことばのリズム”がちゃんと伝わってくるような不思議な魅力があります。
チャウチャウが登場するページのもふもふ感や、虎のきりりとした顔、うさぎの軽やかさ。それぞれが言葉とぴたりと重なり、ページをめくるほどに世界が広がっていきます。
早口ことばの難易度もさまざまで、簡単に言えるものから、大人でも思わず噛んでしまうものまで盛りだくさん。読むたびに「今日は言えるかな?」と、ちょっとした挑戦心がむくむくと湧いてきます。
声に出すと、口の筋肉が自然と動き、息づかいも整っていくため、声の体操のような心地よさがあります。それでいて“遊びながら楽しめる”ので、子どもはもちろん、大人や高齢者にとっても負担がありません。
干支をテーマにしているため親しみやすく、年末年始の季節に読むと、自然とその年の出来事を思い出したり、自分の干支の話題で盛り上がったりと、絵本をきっかけに会話が広がっていくのも魅力です。
笑いながら声に出せる“ことばの遊び絵本”。
世代を越えて一緒に楽しめる、明るく軽やかな一冊です。
おすすめの理由
競わなくても、盛り上がれる
だれが一番うまいかを決めなくても、挑戦するだけで楽しい空気が生まれます。
失敗も、笑いに変わるのがこの絵本のよさです。
繰り返し読みたくなる
「今日は言えた」「今日はダメだった」
読むたびに感じ方が変わり、自然と何度も手に取りたくなります。
年齢をこえて楽しめる
簡単そうで難しい言葉が多く、年齢によってそれぞれの挑戦ができます。
同じページでも、楽しみ方が違うのも魅力です。
声を出すことが、遊びになる
声に出すこと自体が目的になるので、読書が苦手な子も入りやすい絵本です。
読み合いのヒント
「どこまで言えた?」を楽しむ
最後まで言えなくても、「ここまではいけたね」と笑い合う時間が生まれます。
お気に入りの動物を見つける
自分の干支や、好きな動物のページは、何度も挑戦したくなる特別な一枚になります。
読む順番を決めなくてもいい
前のページに戻ったり、気になるところだけ読んだり。
自由な読み方が、この絵本にはよく合います。
まとめ
『十二支のはやくちことばえほん』は、声に出すことそのものが楽しくなる絵本です。
うまく言えても、噛んでしまっても、どちらも笑いに変わる。
その気軽さが、読み合いの時間を明るくしてくれます。
ひとりでも、友だちとでも。
「もう一回やってみよう」が、自然と生まれる一冊です。


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