金色のページが、ひとりの子の心をとらえた日
お米の値段が上がりはじめてから、どれくらいの時が経ったでしょう。そんなことを考えていた頃、小学校の図書室で働いていた時のことを思い出しました。ある日、6年生の子が「数字の絵本はありますか?」と声をかけてくれました。数にまつわる本はたくさんありましたが、8冊ほど並べてみると、その子が迷わず手に取ったのが『1つぶのおこめ』でした。理由を聞くと、「金色があってきれいだから」。その素直なまなざしに、こちらまで胸が温かくなりました。
数字を“美しい”と感じる瞬間に立ち会って
その子は算数がとても好きだと話してくれました。私は数字に苦手意識があったので、「いいなぁ」と思いながら、その本を手渡しました。返却に来たとき、最後のページの数をすべて覚えていたのには、本当に驚かされました。大きな数字が少しも怖くなく、むしろ面白くて仕方がないという表情。物語としての面白さだけでなく、「知恵ものがたり」としての響きも、深く届いていたようでした。
ただ読むだけでなく、空間を美しくしてくれる絵本
この絵本の金色の輝きは、子どもだけでなく大人の目も自然と引き寄せます。表紙の存在感、細やかな装飾、広がっていく数の世界のどれも“飾りたくなる美しさ”を持っています。お米の棚の近くでも、食器売り場でも、和の雑貨コーナーでも、そこに置くだけで空間が少し凛とし、やさしい物語の気配が漂います。読む楽しさはもちろん、暮らしに寄り添う“世界観の絵本”として、この本を思い出すたびに感じます。
絵本紹介
『1つぶのおこめ さんすうのむかしばなし』
作:デミ
訳:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
デミが描く『1つぶのおこめ』は、インドに伝わる昔話をもとにした、知恵とやさしさに満ちた絵本です。金色をたたえた装飾的な絵は、インドの工芸品を思わせる美しさがあり、ページを開くたびに異国の空気がふわりと立ちのぼります。細やかな線と大胆な構図が生み出す独特の世界は、物語として読むだけでなく、眺めているだけで心が静かに整っていくような魅力を持っています。
ひとつのおこめが、ある“めぐり”を生み出していく過程は、算数の規則性を超えて、数字そのものの美しさを感じさせてくれます。大きな数字が苦手な人にも、すでに知識を持つ人にも、それぞれの楽しみ方が生まれ、読み進めるうちに“考えることのおもしろさ”が自然と心に宿るようなつくりになっています。
物語は、少女が小さな選択を積み重ね、世界の見え方が少しずつ変わっていく姿を描いています。文化や時代を越えて受け継がれてきた知恵の物語でありながら、押しつけがましさはなく、人が誰かに手を差しのべる瞬間のやさしさがそっと胸に残ります。
おすすめの理由
金色の装飾が空間に静かな華やぎを添える
表紙の金色や細やかな模様は、棚に置くだけで空気に凛とした美しさを生みます。和の空間にも洋の空間にも自然に馴染み、雑貨・器・食品など、暮らしに寄り添う場所の世界観をそっと引き立ててくれます。
数の広がりが“考える楽しさ”を呼び起こす
数字が軽やかに増えていくリズムは、子どもにとってはワクワクを、大人にとっては“知る喜び”を呼び覚ましてくれます。特別な解説がなくても、ページをめくるだけで自然と「面白い」と感じる仕組みが魅力です。
インドの昔話が持つ知恵がやさしく心に残る
異国の物語でありながら、描かれているのは普遍的な“めぐり”と“やさしさ”。文化を越えて届く温かさがあり、読んだあとにふっと心が静かになる余韻があります。店に並べても、家庭の本棚に置いても、そっと気持ちを整えてくれる一冊です。
読むだけで終わらず、飾りたくなる絵本
装飾の美しさ、数字の並び、金色の輝きと、どれも視覚的な心地よさがあり、読み終えたあとも“置いておきたくなる”。雑貨店や食のコーナー、器のそばなど、暮らしの棚と相性がよく、空間のアクセントとしても活躍します。
まとめ
『1つぶのおこめ』は、物語として楽しめるのはもちろんのこと、手に取るだけで心がそっと整うような静かな力をもつ絵本です。数字の広がりや金色の装飾の美しさは、読む人の感性をふわりと揺らし、日々の暮らしにやさしい光を添えてくれます。
棚に置かれているだけで空間に凛とした気配が生まれ、器や雑貨、食品の近くでも自然に馴染む存在感があります。文化を越えて受け継がれてきた知恵の物語が、読む人の年齢に関わらず、静かに心に染み込んでいくのも魅力です。
ふと立ち止まりたくなる時間を作りたいとき、暮らしの中に小さな美しさを迎えたいとき、この絵本はそっと寄り添ってくれるでしょう。あなたの大切な場所に、一冊置いてみませんか。


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