赤いおふとんがお部屋に春みたいな空気を連れてくる
「もりのおふとん」を開くと、まず目に飛び込んでくる“赤いおふとん”。
ただそれだけなのに、子どもたちの顔がぱっと明るくなる瞬間が大好きでした。
ある冬の日、読み聞かせの時間にこの絵本を見せたら、まだ読み始めてもいないのに、前列の子たちが自然と前のめりになり、「あっ!おふとんだ!」と声をあげました。
赤い色って、こんなにも心をつかむんだな、とあらためて感じた瞬間でした。
動物たちが“ぎゅうぎゅう”と入るたびに、子どもたちも心を寄せ合う
ページが進むごとに、動物たちが一匹、また一匹と赤いおふとんに潜り込んできます。
そのたびに、子どもたちからは
「まだ入れるよ!」
「いや、もう無理だってば!」
「つぶれちゃう~!」
と、にぎやかな声があがって、読み手の私もつい笑ってしまうほど。
面白いのは、子どもたちが自然と“応援チーム”みたいになっていくこと。
ぎゅうぎゅうになっていく状況を、同じ場所で同じ時間を共有しながら楽しんでいる、その一体感がとても愛おしいのです。
乳児クラスではまた違った風景が広がります。
文章が短く単純な構成なので、動物の動きや形を追いながら、ゆっくり絵を味わっていました。
ページをめくると小さな指がそっとおふとんに伸びたり、微笑んだり、この年齢ならではの“静かな参加”があって、その姿にこちらの心まで柔らかくなるのです。
絵本があれば、年齢の違いを超えて同じ時間を楽しめる
幼児は展開を予想して笑い、乳児は色と形をじっと見つめる。
同じ絵本なのに、年齢によって楽しみ方が自然と変わるのは、良い絵本だからこそ。
読み終わったあと、子どもたちが「わたしも一緒におふとんに入りたい」と言ったのを思い出します。
ページの中のおふとんだけじゃなく、絵本を囲む輪の中にも、ふわっと温度が生まれる一冊です。
絵本紹介
『もりのおふとん』
作・絵:西村敏雄
出版社:福音館書店
森の中に、ぽつんと置かれた赤いおふとん。
その不思議な存在感から物語はそっと始まります。ページをめくるたびに、動物たちがふらりと姿を見せ、やわらかな空気の中にユーモラスな気配が広がっていきます。
西村敏雄さんの絵は、丸みのあるフォルムや表情の細やかなゆらぎが魅力で、どの動物もどこか愛嬌があり、見ているだけで思わず口元がゆるむような可笑しさがあります。色彩はシンプルなのに、場面の空気や距離感が丁寧に描かれていて、読み進めるほど“絵が語る物語”の豊かさが伝わってきます。
乳児には、赤い色と動物たちの存在そのものが視覚的な喜びとなり、幼児には「どうなるのかな?」と自然に先を想像したくなる楽しさがあります。大人が読んでも、どこかゆったりとした時間が流れ、心がふっと軽くなるようなあたたかさがあります。
言葉が少なくても、絵だけで物語がまっすぐ届く。
年齢を問わず、読む人の心にやさしい余韻を残してくれる絵本です。
おすすめの理由
見るだけで伝わる、乳児にやさしいシンプルさと安心感
赤いおふとんのくっきりとした色合いと、丸みのある動物たちの形。言葉よりも視覚で世界を受け取る乳児にとって、この絵本はページを開いた瞬間から引き寄せられる力をもっています。動物たちの表情も、にこにこしていなくてもどこかやわらかく、とげのない空気が流れており、自然と安心して見つめられる一冊です。
気持ちを重ねながら楽しめる、幼児ならではの読み
幼児になると、「まだ入れるよ」「ぎゅうぎゅうだよ」と、動物たちの立場に自分の気持ちを重ねながら物語を追うようになります。次々に動物がやってくる構成は、先を予想する楽しさを生み、その子なりの感じ方や受け取り方が、読み合いの中に自然と表れてきます。
年齢が違っても、同じページを囲める絵本
乳児は“見る時間”、幼児は“展開を楽しむ時間”。楽しみ方は違っていても、同じページを同じリズムで味わえるところが、この絵本の大きな魅力です。兄弟姉妹での読み合いや、年齢の混ざった場でも、無理なく一緒に楽しめます。
ページをめくる前の「間」が、期待を育てる
少しだけ間を置いてからページをめくると、次は誰が来るのだろうという期待が静かにふくらみます。そのひと呼吸が、めくった瞬間のよろこびをより深くしてくれます。
絵を眺めるだけで、会話が生まれる構成
文章が短い分、絵の中にはたくさんの情報が詰まっています。からだの位置や重なり方、表情の違いを一緒に眺めているだけで、自然と会話が生まれ、子どもの観察する目も育っていきます。
読み終わったあと、寄り添いたくなる余韻
みんなでおふとんに入る場面は、見ている側の心まであたたかくします。読み終えたあと、そっと“ぎゅっ”と寄り添いたくなるような余韻が残り、ただ一緒に絵本を閉じる時間そのものが、大切なひとときになります。
まとめ
「もりのおふとん」は、絵本の中に描かれた“赤いおふとん”のあたたかさが、そのまま読む人の心にも広がる一冊です。
乳児は色と言葉のリズムを楽しみ、幼児は展開を予想しながら物語に参加し、大人は動物たちの穏やかな表情にほっと癒される。
年齢ごとに楽しみ方が自然と変わる、懐の深い絵本です。
寒い日や、疲れた日、心をゆるめたい日。
どんなときに開いても、「ああ、絵本っていいな」と思わせてくれる、親子の時間に寄り添う存在だと感じています。


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