『さむがりやのサンタ』

サンタのぼやきに、自分の気持ちを重ねて

「さむがりやのサンタ」は、寒さに文句を言いながら布団の中でもぞもぞしているサンタから始まります。
あの姿を見て、思わず笑ってしまいました。
だって、あれは昔の私でもあり、今の私でもあるからです。

子どもの頃も、思春期の頃も、大人になった今も。
「起きたくない」「外に出たくない」「なんだかやる気が出ない」そんな気持ちは、年齢に関係なくふっと心に顔を出します。
サンタのぼやきは、そんな“誰にでもある正直な気持ち”そのもののようで、読みながら思わずうなずいてしまいました。

生活感あふれるサンタに、親しみがわく理由

布団から出るまでのぐずぐず、着替えの面倒くささ、食事のときの小さなぼやき。
サンタなのに、サンタだからこそ、人間らしさがあふれています。

その生活感が、どこか日常の自分と重なるのです。
「今日はやめてしまいたいな…」と思いながらも、結局いつものルーティンに体が動き出す。
そんな心の動きが丁寧に描かれていて、“わかるなぁ”という気持ちが胸の奥でじんわり広がります。

思春期の揺れる気持ちも、大人になって抱えるモヤモヤも、全部まとめて包み込んでしまうような温度を感じました。


一日の終わりの笑顔に、そっと背中を押される

物語の終わりで、仕事を終えたサンタがビールを飲み、ごちそうを前にほっと緩むシーンがあります。

この一瞬が、なんともいえず好きです。

どれだけぼやいても、どれだけ寒くても、それでも一日をやりきった自分をねぎらうような表情。
まるで、私たちが一日の終わりに“今日もなんとか頑張ったな”と小さく息をつく瞬間にそっくりです。

思春期のころは、理由のわからない疲れや迷いに包まれやすく、大人になれば、別の重さが肩にのってくる。
でも、そのどちらの気持ちにもサンタの姿はやさしく寄り添ってくれるのです。

「大丈夫、こんな日もあるよ」
そんなふうに声をかけられたような、あたたかい読後感が残りました。

絵本紹介

『さむがりやのサンタ』

作・絵:レイモンド・ブリッグズ
訳:すがはらひろくに
出版社:福音館書店

寒いのが大の苦手なサンタが、つぶやきながら一日を始める。
そんなユーモラスでどこか人間らしい姿から、この絵本の世界は静かにひらいていきます。完璧でもなく、特別でもない“働く大人”としてのサンタが描かれていて、読んでいるこちらまで思わず笑ってしまうような親しみがあります。

レイモンド・ブリッグズの絵は、細かな描き込みや独特のテンポが心地よく、まるでコマ割りの映画を見ているような臨場感に満ちています。雪の冷たさや家々に漂うあたたかさまで伝わってくるようで、ページを追うたびにサンタの一日をそっとのぞき見る感覚が広がります。

頼りなく見えて、どこか頼もしい。文句を言いながらも淡々と役目を果たすサンタの姿には、大人なら誰もが覚えのある気持ちがゆるやかに重なっていきます。

読み終えたあとに残るのは、「完璧じゃなくていい」「不機嫌な日があっても大丈夫」というやわらかな安心感。ユーモアの奥にやさしさが宿る、何度でも開きたくなる一冊です。

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思春期〜大人におすすめしたい理由

ぐずぐずしても動き出す“心のリズム”に寄り添ってくれる

布団から出たくない気持ち。
寒さに負けそうになる気持ち。
それでも、いつもの流れに背中を押されて動き出す自分。

思春期の子が抱える「動きたいのに動けない」揺れにも、大人の「今日は無理かもしれない」という疲労にも、この絵本のサンタはやさしく寄り添います。

「そんな日もあるよね」と言ってくれる存在のようです。

素直にぼやけるサンタが、“弱さの居場所”をつくってくれる

私たちはつい、「ちゃんとしなきゃ」「頑張らなきゃ」と思ってしまいます。

でもサンタは、堂々とぼやきます。
しかも、とても自然に、当たり前のように。

その姿を見ると、弱さや不機嫌さ、やる気のなさを“否定しなくていい”という安心感が生まれます。

思春期の子にも、大人にも必要な、“弱さを抱えたままでも前へ進める”というメッセージが感じられます。


一日の終わりにほっと息をつく“自分をねぎらう時間”が思い出せる

最後にサンタがごちそうを前にゆるむ表情は、「今日もよくやった」と自分に言ってあげたくなる瞬間を運んできます。

思春期の子が抱える重たい気持ちも、大人が日々抱える責任の重さも、そのひとコマでふっと軽くなるような余白があります。

一日の終わりにこの絵本を読むと、気持ちのこわばりがやわらいでいくのを感じられます。

まとめ

「さむがりやのサンタ」は、クリスマスの絵本でありながら、“生きるテンポがうまく整わない日”に寄り添ってくれる一冊です。

思春期の心の揺れにも、大人の日常の疲れにも、サンタは静かに、ユーモラスに、「そのままのあなたで大丈夫」と伝えてくれます。

文句を言いながらも仕事を終え、最後にはごちそうを前にほっと笑うサンタ。

その姿は、完璧じゃない私たちが、今日をなんとか終えたときのやわらかい安心と重なります。

読んだあと、自分を少しだけ許せるようになる。そんなあたたかい余韻を残してくれる絵本です。

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