絵本との出会いがくれた問い
『ルピナスさん』は、私が長く大切に読んできた絵本のひとつです。初めて手にしたとき、バーバラ・クーニーの絵の美しさと物語の静かな強さに胸を打たれ、「自分は世界をどう美しくできるだろう」と、そっと問いかけられました。
あの時に感じた思いは、心の奥で長い間眠っていましたが、今こうして絵本の魅力を届けるブログを始めたことで、ようやく自分なりの小さな“種まき”ができているのだと感じています。
主人公の歩みに重なる、自分自身の経験
物語には、幼いころに受け取ったひとつの言葉を胸に、時間をかけて人生を歩んでいく主人公が登場します。華やかな出来事よりも、日々の中で積み重ねてきた経験や出会い、静かな気づきが物語をつくっていくところに、深い共感を覚えます。
特に、年齢を重ねてきた方には、“長い人生で受け取ってきた優しさや思いやりは、目には見えなくても心の中で生き続けている”というメッセージが、やわらかく響くのではないでしょうか。
小さな行いが誰かをあたためるという希望
絵本には、主人公がどのようにその言葉を大切に抱え、生き方の中に息づかせていったのかという過程が美しく描かれています。
大きなことをしなくてもいい。日々の中で誰かに向けて続けてきた小さな行いが、思いがけない場所で誰かを温めているかもしれない。そう思えるような、静かな希望が滲んでいます。
この絵本は、高齢者の方がこれまで歩んできた人生そのものにやさしく寄り添い、「あなたがしてきたことは確かに誰かの心を照らしてきました」と肯定してくれるように感じます。
読み終えると、これまでの経験や人とのつながりが、ひとつの道となって美しく続いてきたのだと、そっと振り返りたくなるような余韻が残ります。
あなたが歩んできた時間や、人に向けて差し出してきた優しさは、たしかに世界のどこかで誰かの力になっています。
『ルピナスさん』は、そのことを静かに思い出させ、これからの日々にあたたかな光を添えてくれる一冊です。
絵本紹介
『ルピナスさん』
作:バーバラ・クーニー
訳:掛川恭子
出版社:ほるぷ出版
『ルピナスさん』は、バーバラ・クーニーが静けさの中に力強さを宿して描いた、深い余韻をもつ一冊です。淡い色彩と丁寧な筆づかいで綴られるのは、ひとりの女性が自分の人生をゆっくりと形づくっていく時間。その歩みに寄り添うような物語が、読み手の心に静かに広がっていきます。
クーニーの絵は、海や空、街並みの奥にある“気配”まで描いているようで、どのページにも風が通り抜けるような透明感があります。景色の中に漂う余白は、読み手が自分自身の歩みや記憶をそっと重ねられる場所となり、絵本全体に穏やかな深さを添えています。
掛川恭子さんの訳文は、原文のあたたかさをそのまま保ちながら、日本語としての伸びやかさや余韻を大切にしており、言葉の選び方ひとつひとつがやわらかく胸に届きます。
この絵本が長く読み継がれてきたのは、“何か特別なこと”ではなく、日々の中にひっそりと宿る思いや選択に光を当てているからかもしれません。読む年代や状況によって受け取る意味が変わり、そのたびに新しい表情を見せてくれる奥行きのある作品です。
高齢者ギフトとしておすすめする理由
人生の歩みをそっと肯定してくれる
“積み重ねてきた時間そのものが価値を持つ”という静かなメッセージが、物語全体に流れています。大きな功績ではなく、日々の中で続けてきたことの尊さに光を当ててくれます。
年齢によって響く場所が変わる奥行き
若い頃は憧れとして、年齢を重ねると深い共感として読める絵本です。人生経験の豊かさが、そのまま読み解く力となり、物語がより深く胸に沁みていきます。
クーニーの絵が語り、心をやわらかくする
淡い色彩で描かれた風景や人物は、言葉以上に心に語りかけます。絵を眺めるだけでも気持ちが落ち着き、自分の過去を静かにふりかえる時間が生まれます。
控えめながら力強い希望がある
大げさではない、ほんの少しの光。その“ささやかな希望”が読み手の心に寄り添い、「人生はまだ続いていく」と思わせてくれる不思議な力があります。
贈り物として“相手の人生を讃える”ことができる
「あなたが生きてきた時間には、たくさんの優しさと意味がありました」と伝えられる絵本です。節目の贈り物としても最適で、相手の人生そのものを美しく照らします。
贈り方のヒント
一緒に添えられるやさしい一言メッセージ
人生をねぎらいたい相手へ
「あなたが重ねてきた時間は、静かに花のように咲き続けています。その歩みに心からの敬意をこめて。」
新しい一歩を迎える相手へ
「ゆっくりでかまいません。あなたの種が、またどこかでそっと芽を出しますように。」
力を尽くしてきた相手に
「日々の小さな積み重ねが、こんなにも素敵な“景色”をつくってきたのだと、この本が教えてくれました。」
会えない時間が続く大切な人へ
「離れていても、あなたのしてきたことが私の心をあたためています。この絵本とともに気持ちが届きますように。」
これまでの人生を労いたい相手へ
「あなたが歩んだ道は、誰かをそっと励ます光になっています。その優しさに、ありがとうをこめて。」
本を読むのが負担になりがちな方へ
「文字を追わなくても、ページを眺めるだけで心がふわりと落ち着く一冊です。どうぞ気軽にひらいてみてください。」
まとめ
『ルピナスさん』は、人生の中で積み重ねてきた時間や、静かに続けてきた小さな行いに光を当ててくれる絵本です。
大きな成功ではなく、日々の中で誰かに差し出してきた優しさや思いやりこそが、世界を美しくしてきたのだと、そっと伝えてくれます。
年齢を重ねた方の心に深く響くのは、主人公の姿が“特別な人”ではなく、“誰もが持つ力で世界に彩りを添えていく人”として描かれているからかもしれません。
この絵本を手にしたとき、読み手はきっと自分の人生をゆっくりと思い返し、「ああ、自分も誰かの心に花を咲かせてきたのだ」と静かに感じることでしょう。
贈り物として手渡すとき、この絵本は相手の人生に寄り添い、その歩みをやさしく讃え、これからの日々に温かな光を添えてくれます。
深い余韻の残る一冊として、高齢者の方への贈り物にぴったりの絵本です。


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