海時計職人ジョン・ハリソン

時計に宿る“見えない努力”を思い出した日

今、当たり前のように動いている時計が、こんなにも大変な努力の末に生まれたのだと知り、胸が熱くなりました。
村にやってきた牧師が数学の講義ノートを貸してくれた。そんな小さな出来事から始まった、ジョン・ハリソンの時計づくり。読み進めるほどに、新しい発想が次々と生まれ、彼の手によって時計が姿を変えていく様子に引き込まれていきました。やがて船の上で必要とされる特別な時計をつくるために生涯をささげて挑み続ける姿に、静かな勇気をもらいました。

“時間”とともに生きてきた私の記憶

ふと、小さい頃のことを思い出しました。
家にあったボンボン時計。振り子がゆらゆらと揺れ、時間になると「ボーン、ボーン」と響く重たい音。ねじを巻くのを忘れると少し鈍くなるその音さえ、どこか愛おしく感じていました。鍵のようなものでくるくるとねじを巻く動作が、幼い私にはとてもかっこよく見えたのです。

その記憶が、この絵本と重なりました。“時間が動く”という当たり前の裏側には、どれだけの情熱と知恵が積み重なっているのか。それを、ジョンの生き方がそっと思い出させてくれます。

挑戦し続ける姿が、心に灯りをともした瞬間

ジョン・ハリソンは、誰からもすぐ認められたわけではありません。
それでも「もっとよくできるはずだ」「まだ工夫の余地がある」と信じ、何年も何十年も改良を重ねます。その姿は、日々子どもたちの“やってみたい”を支えているときの気持ちとどこか重なりました。小さな一歩を積み重ねることの大切さを、ジョンは背中で語っています。

ページをめくるたび、木のぬくもり、金属の光、海のひろがり。職人の手の中で生まれる時計の世界が丁寧に描かれ、“知る喜び”と“探求を続ける強さ”が静かに心に満ちていく一冊です。

絵本紹介

『海時計職人ジョン・ハリソン』

文:ジョアンナ・コール
絵:マリリン・ハフィ
訳:小川仁
出版社:福音館書店
初版:2006年

18世紀の時計職人ジョン・ハリソンの生涯をたどる、事実に基づいた物語絵本です。
小さな村で大工として働いていたジョンは、ふと手にした数学の講義ノートをきっかけに、歯車や振り子の仕組みに魅了され、独自の工夫を凝らした時計を生み出していきます。

その後、航海で位置を測るうえで欠かせない“正確に時を刻む時計”を求められ、ジョンは人生のほとんどをその探求にささげます。木材の伸縮、温度差、湿気、揺れなど、さまざまな困難に立ち向かいながら、試作と改良を何十年も繰り返しました。

ハフィによる絵は、工具の細部や木目の質感、金属の輝きまで丁寧に描き込み、手仕事の緊張感と美しさがページから伝わってきます。
読み終えると、時計が“ただの機械”ではなく、人の情熱と知恵が積み重なって生まれた作品なのだと深く実感させてくれる一冊です。

セレクトショップでおすすめしたい理由

時計や道具を扱う棚の“物語性”が一気に高まる

木・金属・海の色など、絵本に登場するモチーフが雑貨やクラフト品の世界観と自然に調和します。

大人が思わず手を伸ばす“知的な魅力”がある

探求・職人・挑戦といったキーワードが、幅広い年代の興味をひきます。

什器や時計売り場の空気を変える1冊

“時間をつくるとは何か”を表現でき、売り場のストーリーを深めてくれます。

見るだけで「丁寧に作る」という価値観が伝わる

クラフト系ブランドや手仕事系のショップの世界観に非常に馴染みます。

ワークショップや店内イベントのテーマに使える

「時間」「ものづくり」「探求」など、企画の軸が立てやすい絵本です。

まとめ

『海時計職人ジョン・ハリソン』は、“時間の裏側にある情熱”を静かに伝えてくれる絵本です。
木と金属の質感、海のひろがり、時計が生まれる瞬間、その一つひとつが、ものづくりの尊さをそっと照らしてくれます。

ディスプレイに置くと、棚に“探求の物語”が流れはじめ、大人の来店客が思わず立ち止まる空気が生まれます。
クラフト・時計・文具・ライフスタイルショップに、深い世界観を与えてくれる一冊です。

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