友人と手を動かしていた時間が、静かによみがえる
この絵本を開いたとき、友人とバザー販売のためにブローチを作っていた時間の感触が、ふっと戻ってきました。
布や毛糸、ボタン、ビーズを前に、何を組み合わせようかと考えていたあの頃。
楽しい会話を交わしながら、目の前の素材に向き合っていた時間です。
文様を眺めていると、作業の途中で手を止め、柄の美しさに見入っていた記憶が重なります。
分業のなかにあった、友人それぞれの得意
ブローチの土台を作る人、布を合わせて縫う人、ボタンやビーズで飾る人。
同じものを作っていても、役割は自然と分かれていきました。
この絵本の文様を追っていると、ひとつの形の中に、いくつもの手や視点が重なっているように感じます。
自分の得意なことが、作品の一部になっていた、あの感覚を思い出させてくれます。
文様を「選ぶ」時間の楽しさ
生地を広げて、「どれにしようか」と迷っていた時間。
色や形を見比べながら、少しずつ組み合わせを決めていく過程そのものが、楽しい時間でした。
この絵本に並ぶ文様を眺めていると、そのときの感覚が自然によみがえります。
文様は、完成品よりも前にある「選ぶ時間」までも、豊かにしてくれるものなのだと感じます。
絵本紹介
『文様えほん』
作:谷山 彩子
出版社:あすなろ書房
文様えほんをめくっていると、文様は特別なものではなく、ずっと暮らしのそばにあったのだと気づかされます。
壺や茶釜、はにわといった道具や器。
貴族の衣装や陣羽織、役者文、着物にほどこされた文様。
さらに、ラーメン丼の模様のような、思いがけず身近なものまで登場します。
文様は、時代や身分を越えて、人の暮らしの中に息づいてきました。
植物や動物、自然をかたどった文様も多く、形の中に込められた願いや、自然へのまなざしが感じられます。
眺めているうちに、「これは見たことがある」「これは初めてだ」と、記憶や発見が静かに行き来します。
文様の世界地図のページでは、国や地域によって広がる模様の違いが一望でき、文様が人の移動や文化とともに受け継がれてきたことも伝わってきます。
順番に読んでも、気になるページから開いても楽しめる、見る時間そのものを味わう絵本です。
おすすめの理由
文様を見て、懐かしさや新しい発見に出会える
この絵本に並ぶ文様の中には、どこかで見たことのある形や、記憶の奥に残っている模様が見つかります。
一方で、初めて目にする文様もあり、「こんな形もあるんだ」と新しい発見も生まれます。
眺めているうちに、心が静かに整っていくような時間が流れます。
文様の名前や意味を、じっくり味わえる
文様には、それぞれ名前があり、由来や意味が添えられています。
形を見るだけでなく、言葉を通して文様に触れられることで、ひとつひとつをゆっくり確かめる楽しみが生まれます。
気になるところで立ち止まりながら、自分のペースで読み進められるのも、この絵本の魅力です。
文様から、次の楽しみが広がっていく
ページをめくっていると、「この文様を描いてみたい」「誰かに話してみたい」そんな気持ちが自然に湧いてきます。
絵本の中で完結せず、文様をきっかけに、手を動かしたり、話題にしたりと、楽しみがその先へ続いていくところが、贈り物として心に残ります。
贈るヒント
あたたかさを届けたくて
文様を一つひとつ眺めていると、気持ちが静かにほどけていくように感じました。
この絵本と一緒に、やさしい時間も手渡せたらと思って選びました。
大切な方へ
たくさんの文様が並ぶページを見ていると、どれも違って、どれもきれいだと感じました。
この絵本を、あなたに手渡したくなりました。
感謝の気持ちを込めて
日々の中で積み重なってきた感謝を、文様のある一冊に託したくて選びました。
この絵本が、ありがとうの気持ちをそっと運んでくれたらと思います。
手を動かすのが好きな方へ
文様を見ていると、線をなぞったり、形を写したりしてみたくなります。
手を動かす楽しみが、自然に広がっていく一冊として、この絵本を選びました。
まとめ
『文様えほん』は、眺めること、読むこと、思い出すこと、手を動かすことへと、文様をきっかけに、静かに世界がひらいていく一冊です。
懐かしさに触れたり、新しい形に出会ったり、名前や意味をじっくり味わったり。
その時間の過ごし方は、人それぞれで、決まった形はありません。
だからこそ、「元気を出してほしい」「何かを感じてほしい」と言葉を添えなくても、ただ、この絵本を手渡すだけで、気持ちが自然に届く。
高齢者への贈り物として、そっと寄り添い、長くそばに置かれる一冊だと思います。


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