『ポンチャックさん』

しまう前に、手が止まる時間

片付けようと思って箱を開けたはずなのに、気づけば中のものを一つひとつ手に取り、その頃の出来事や人の顔が浮かんできます。
時間は進まず、部屋の景色も変わらないまま。
それでも、その時間だけは、静かに満ちていきます。

手放した記憶が、そっと残っている

思い切って手放したあと、「あれは残しておけばよかった」と思ったことが、心のどこかに、今も小さく残っています。
多くの「大丈夫だった」よりも、たった一つの後悔の感触の方が、長く残るものです。

自分の姿を、重ねて見る

ページをめくりながら、どこか他人事とは思えない感覚がありました。
持ち続けること、迷うこと、決めきれないこと。
それらすべてが、そのままの形で描かれていて、読み終えたあと、少し愛おしい気持ちが残りました。

絵本紹介

『ポンチャックさん』

作:池谷陽子
出版社:福音館書店

牛のポンチャックさんは、気になるものに出会うと、そのまま通り過ぎることができません。
花や石ころ、遊び道具や本など、心が動いたものは家へ持ち帰り、大切にしまってきました。
ある日、家の中を片付けようとしますが、手に取ったものごとに足が止まり、遊びが始まったり、読みふけったり、思い出にひたったりして、時間だけが過ぎていきます。
片付けようとする気持ちと、手元に残したい想いが行き交う中で、部屋の景色は少しずつ変わっていきます。

おすすめの理由

思い出に立ち止まる時間を、そのまま抱えていられる

手に取ったものから、過去の出来事や人の顔が浮かび、片付けの手は止まってしまう。
その時間は、進まない時間でも、無駄な時間でもなく、人生の中で積み重ねてきた記憶に触れる時間として描かれています。
思い出に浸ること自体を、静かに受け止めてくれる一冊です。

片付けられなさが、物語の一部として描かれている

迷い、寄り道し、途中で別のことを始めてしまう。
ポンチャックさんの行動は、とても人間的です。
整えきれなさや決めきれなさが、改善すべきこととしてではなく、物語の流れとして描かれることで、自分の歩んできた時間にも、居場所が生まれます。

自分の宝物を、心の中で並べてみたくなる

物語に出てくる宝物を眺めているうちに、読み手は自然と、自分の宝物を思い浮かべます。
形のあるものも、思い出として残っているものも、「これは何だろう」と心の中で確かめる時間が、
想像の楽しさとして、静かに広がっていきます。

贈り方のヒント

ほっと笑える時間を届けたくて

「思い出話が、自然と始まる時間がありますように。」

気持ちをそのまま抱えながら

「大切にしてきた想いを、ゆっくり眺められますように。」

宝物の話を、心の中で

「集めてきた時間が、やさしく思い出されますように。」

今日の時間を、少しゆるめて

「気になるところから、気ままにページを開いてください。」

そばにある一冊として

「これからの時間にも、そっと寄り添ってくれますように。」

まとめ

片付けが進まない日も、思い出に立ち止まる時間も、そのまま抱えてきた人にこそ、そっと寄り添う一冊です。
何かを決めなくても、整えなくても、ページを開けば、これまで集めてきた時間が顔を出します。
どうぞ、ご自身の宝物を思い浮かべながら、静かに手に取ってみてください。

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