『クリスマスものがたり』

クリスマスの本当の意味を子どもと感じた時間

先日、藤本朝巳先生の講座で、この2冊の『クリスマスものがたり』を紹介していただきました。
静かに語られる絵本の世界をあらためて味わいながら、これまでの保育の時間がそっと重なり、この季節にもう一度手に取りたいと思った絵本です。

キリスト主義の幼稚園で勤めていた頃、毎年の12月は特別な季節でした。降誕劇を通して子どもたちと「クリスマスって何の日?」を一緒に考え、その中で静かに“本当の意味”に触れる瞬間がありました。

その際に、フェリクス・ホフマンの『クリスマスものがたり』をよく読みました。
素朴で真っすぐな語り口が子どもたちにすっと届き、読み終わったあと、小さな沈黙が流れることがありました。
その沈黙こそ、物語が心に届いた証のようでした。

切り絵の美しさと、訳のちがいが生む“余白”

その後、パメラ・ドルトン作・藤本朝巳さん訳の切り絵絵本『クリスマスものがたり』に出会いました。
ページを開いた瞬間、細部まで緻密な切り絵に息をのみ、静けさの中に物語が光って見えました。

そして読んでみると、フェリクス・ホフマン作・生野幸吉さんの訳とは印象が大きく違うのです。

読み比べてみて感じたのは、同じ「クリスマスものがたり」でも、訳によってこんなにも伝わり方が変わるのだということでした。

生野幸吉さんの訳は、子どもたちに読み聞かせてきた経験そのままに、素直でやさしい語り口が印象的で、物語の流れがすっと入ってきます。
場面ごとの説明もていねいで、子どもが“何が起きているのか”を理解しやすい構成になっています。語りとしての分かりやすさが、長いあいだ私の読み聞かせを支えてくれました。

一方で、藤本朝巳さん訳は、言葉の響きそのものがまったく違って聞こえました。ひとつひとつの文章が静かで、どこか祈りのようで、読み進めるほどに自分の呼吸がゆっくりになっていくのを感じました。
説明しすぎない訳し方が“余白”を生み、その余白に、こちらの想いや想像がそっと置けるような感覚があるのです。
聖書の物語を大切に抱えたまま、詩のような柔らかさで伝えてくれる訳だと思いました。

どちらも同じ物語なのに、生野幸吉さんの訳が「伝えるための言葉」だとすれば、藤本朝巳さんの訳は「味わうための言葉」と感じました。ふたつの訳を並べて読むことで、クリスマスの物語がより深く、静かに心に入ってくるのを感じています。

ふたつの『クリスマスものがたり』を並べて読む意味

この2冊は、「クリスマスの本当の意味に、違った角度から光を当ててくれる」そんな関係性の絵本だと感じています。

かわいいクリスマス絵本が多い中で、この2冊は“静けさ”や“祈り”をそっと手渡してくれる存在です。忙しい12月に、子どもにも大人にも、心を落ち着けてくれる時間をくれる絵本だと思います。

絵本紹介

『クリスマスものがたり』パメラ・ドルトン作/藤本朝巳訳

切り絵の白い光が、祈りのようにページに宿る

パメラ・ドルトンの切り絵による『クリスマスものがたり』は、ページを開いた瞬間、その世界に吸い込まれてしまうような不思議な力があります。色を一切使わず、白と黒だけで描かれた風景は、余計なものをそぎ落とし、物語の本質だけをそっと残しているように感じられます。細かい模様や光の表現は圧倒的でありながら、決して派手さや強さではなく、深呼吸をしたくなるような静けさをまとっています。

藤本朝巳さん訳の文章は、とてもやわらかく、ひとつひとつの言葉がゆっくりと胸の奥に沈んでいくようです。説明しすぎず、感情を押しつけることもなく、ただ物語の流れに寄り添うように語られています。そのため、読み進めるうちに自分の心が整い、静かに深まっていく感覚がありました。
切り絵と訳文がひとつになって、イエスの誕生の物語が“祈りのようにそこにある”。大人がひとりで読んでも、子どもと一緒に読んでも、それぞれの心に違う温度で光が届く一冊です。

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『クリスマスものがたり』フェリクス・ホフマン作・生野幸吉訳

物語の“入り口”として子どもと歩んできた原点の絵本

フェリクス・ホフマン版の『クリスマスものがたり』は、私が幼稚園で長いあいだ大切に読んできた、原点となる絵本です。素朴でやさしい文章でつづられ、クリスマスの物語をはじめて知る子どもにとって、とても入りやすい構成になっています。ページをめくるたびに、何が起きているのかが自然と理解できるように書かれていて、降誕劇の季節に読むと、子どもたちの中で物語と演じる体験が重なっていくのを感じました。

この絵本を読むと、毎年クリスマスが近づくたびに、保育室の光や子どもたちの表情まで思い出されます。

おすすめの理由

切り絵がつくる“静かな世界”が、子どもの心を落ち着かせる

パメラ・ドルトンの切り絵は、ただ視覚的に美しいだけではなく、見ている人の呼吸を自然とゆっくりしてくれる力があります。光と影だけで描かれる世界は、絵本を前にしている子どもの表情まで変えてしまうほど。にぎやかな12月に、あえてこの静けさに触れることは、親子の時間を豊かにしてくれます。

藤本朝巳さん訳の“そっと置いていくような言葉”が、子どもの心に届く

藤本朝巳さん訳の文章は、説明的ではありません。しかしその分、聞いている子どもたちが自分の中で考えたり、感じたりする余白が残されています。こうした余白こそ、子どもたちが物語の意味を受け取る力につながっていきます。

フェリクス・ホフマン版が理解を助け、切り絵版が物語を深める

フェリクス・ホフマン版の素直な語り口は、物語の基礎部分を子どもにわかりやすく伝えてくれます。これによって、パメラ・ドルトンの切り絵版を読むときに、言葉や絵をより深く味わえるようになります。“理解”と“味わい”のバランスが生まれるのは、この2冊を組み合わせた読み方ならではの魅力です。

夜の読み聞かせにぴったりの落ち着いたリズム

切り絵版は特に夜の読み聞かせに向いています。語りのリズムが落ち着いていて、ページをゆっくりめくることで、寝る前の時間がやさしく整っていきます。忙しい季節の中で、親子の心を静かに戻してくれる絵本です。

クリスマスを“感じる”ことを手伝ってくれる絵本

プレゼントやサンタがテーマの絵本とは違い、この2冊はクリスマスの本当の意味に、そっと光を当ててくれます。信仰を押しつけるものではなく、ただ物語をそこに置く。その静かな距離感が、子どもにも大人にもやさしく働きかけてくれます。

読み合いのヒント

クリスマスの光と影が “静かに移り変わる時間” を味わう

クリスマスの物語は、明るさだけでなく不安や祈りが入り混じる“ゆらぎ”が魅力です。
読み合いでは、登場人物の心が少しずつ動いていく様子を、ページの空気の変化ごとそっと味わえるよう、急がずにめくると物語の深さが見えてきます。

子どもが気づいた“ひとつの場面”をじっくり受け止める

クリスマスの物語では、どの場面で心が動くかは子どもによって大きく違います。
ある子は小さな星に、ある子は動物の表情に反応します。
その瞬間を邪魔せず、“そこに心がとまった理由”を子ども自身が感じられるように、ページを少し長めに開いておくのがおすすめです。

「静かなページ」と「語りのあるページ」のリズムを大切に

絵が語りかけてくる場面と、言葉が導いていく場面が交互に現れるのが、この物語の魅力です。
読み手がそのリズムを感じていると、ページをめくるタイミングが自然に整い、子どもたちも物語の世界に心地よく入っていきます。

まとめ

パメラ・ドルトンの切り絵版『クリスマスものがたり』は、クリスマスの季節にあふれるにぎやかな絵本とはまったく異なる静けさをまとっています。白と黒の世界が生み出す光の美しさ、藤本朝巳さん訳のやわらかな言葉。そのどれもが心の奥にそっと触れ、読むたびに深い余韻を残します。
そしてフェリクス・ホフマン版の素朴でやさしい語りが、この切り絵版をより豊かに味わうための“入口”となってくれます。

2冊を並べて読むことで、理解と味わいが自然に重なり、クリスマスの物語がより立体的に、あたたかく胸に広がっていきます。忙しい12月だからこそ、静かにページをめくる時間が、親子にとって大切な光となるはずです。
クリスマスの本当の意味に静かに触れたい方に、そっと手渡したい2冊です。

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『クリスマスものがたり』パメラ・ドルトン作/藤本朝巳訳

「クリスマスものがたり」フェリクス・ホフマン作・生野幸吉訳

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