クリスマスが近づくと、心の奥にそっと灯る感覚がある
わたしにとってクリスマスは、昔から特別な季節でした。華やかさよりも、静かに灯る小さな光に心が惹かれ、12月が近づくと「いよいよこの時期が来た」という気持ちになります。実際には慌ただしく過ぎていく日々なのに、不思議と心の奥ではひとつひとつの場面が印象深く残り、いつもより季節を強く意識するのがこの時期です。
子どもたちと過ごしたアドベントが、その思いをさらに確かなものにした
子どもたちが鳥取でピアノを習っていた頃、先生が用意してくださっていたアドベントカレンダーが、冬の小さな楽しみでした。レッスンのたびにひとつだけ開ける小さな引き出し。チョコがひょこっと顔をのぞかせると、子どもたちの表情がぱっと明るくなり、その一瞬の喜びが、日常の慌ただしさの中に小さな灯りをともしてくれるようでした。その光景を見ていると、「やっぱりこの季節は特別だな」と、改めて心が落ち着くのを感じました。
チェコの絵本と出会い、心にあった灯りと静かに重なった
そんな冬の日々のなかで出会ったのが、チェコのフランタの物語でした。
彼は、あかりをもらいに教会へ向かった日、思いがけない失敗をしてしまいます。
その帰り道、落ち込む気持ちを抱えながらも、ふと出会った老人に向けて小さな一歩を踏み出します。
その場面は派手な出来事ではないのに、読む側の心の深いところにそっと触れてきます。
フランタが“あかりを受け取れなかった日”に見せた行動を読んでいると、忙しい季節の中でも、心の奥に静かに残る光のようなものを思い出しました。
静かで個人的な“光の体験”が胸に灯るようで、冬になると自然に手に取ってしまう一冊です。
絵本紹介
作:レンカ・ロジノフスカー
絵:出久根育
訳:木村有子
出版社:福音館書店
『クリスマスのあかり ~チェコのイブのできごと~』は、チェコに古くから伝わる“灯り”の習慣を背景にした物語です。この国では、クリスマスを迎える季節に、灯りを分け合う文化があります。ただ光を持ち帰るというだけでなく、“その灯りがどんなふうに心に働きかけるのか” を大切にしてきた人々の感性が、この絵本の根底に流れています。
主人公のフランタは、まだ幼い男の子。彼が過ごす冬の日常は、特別な行事ではなく、家族や街の人々とのあたたかなつながりに満ちています。出久根育さんの絵は、冬の空気をやわらかく含んだ色合いで、チェコの家々や街の雰囲気をやさしく伝えてくれます。光の表現は派手ではありませんが、ページ全体にさりげなく漂う“あかりの気配”が印象的で、読んでいる側の心にも静かな余白が生まれます。
物語は日常の中にある小さな心の揺れが、ひとつの行動へとつながっていく様子が丁寧に描かれています。視点は子どもの目線に寄り添いながらも、大人が読むとより深い意味が浮かびあがり、“灯りとは何か” をそっと問いかけてくるようです。
読み終えたあと、チェコのどこかで実際に揺れていた光が、こちらの胸にもふっと届いたような不思議な余韻が残る作品。
冬の静けさと、人の優しさをていねいに描いた絵本です。
おすすめする理由
チェコの文化が、静かな深みとして読者の心に残る
灯りを分け合うという習慣が物語の背景にあり、国を超えて“人が人を思う時間”の美しさに触れられます。
描かれていない部分が、かえって想像を広げてくれる
説明しすぎない語り口が、読者自身の経験や感情をそっと呼び起こし、物語と自分の心が交差する瞬間をつくります。
小さな行動に宿る意味を、静かに届けてくれる
大げさなドラマではなく、ちいさな選択が世界を温める。その普遍的なテーマが、思春期や大人の心にすっと入ります。
まとめ
『クリスマスのあかり』は、冬の静けさの中で生まれる“心のあかり”を描いた物語です。
説明されない余白が多いからこそ、自分自身の経験や感情と重なり、読み手の中で光がそっと広がっていきます。
大切なのは、特別な場面よりも、日常の中で生まれるやさしさ。そのことを押しつけず、静かに教えてくれる絵本です。
ページを閉じたあとも、灯りの余韻が胸に残り、今日のどこかで自分も小さなあかりを灯してみたくなる一冊だと感じます。


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