『やまあらしぼうやのクリスマス』

クリスマス前のお部屋に満ちる“そわそわ”と“きらきら”

「やまあらしぼうやのクリスマス」は、幼稚園で働いていたころ、クリスマスの準備が始まる季節になると必ず読みたくなる絵本でした。12月に入ると、子どもたちは毎日のように劇の話で盛り上がり、誰がどの役になるのか、期待と不安がかわりばんこに胸を行き来しているようでした。

ページをめくるたびに、息をのんだり、くすっと笑ったり、身を乗り出したり。お部屋全体が絵本に引き寄せられていくような時間。その“そわそわ”と“きらきら”が、今でも忘れられません。

なりたい役と、なれない役。その間で揺れる小さな心

やまあらしぼうやが配役の場面で傷つくシーンは、読むたび胸に迫るものがありました。
配役は子どもたち同士で相談して決めることが多く、どうしても希望通りにいかない瞬間がありました。

「やりたい役」が重なり、話し合いが白熱する子どもたち。
工夫として同じ役を複数で演じても、残った役を前にしょんぼりする子がいます。
その姿を見るたびに、

“この役だからこそ出せる魅力があるんだよ”

そう伝えたいのに、どう言えば届くのかずっと悩んでいました。

そんなときこの絵本を読むと、やまあらしぼうやのお母さんのあたたかな言葉が、わたし自身の気持ちまでそっとほどいてくれるようでした。子どもが役をどう受け止めるのか、急かさずに見守る大切さを教えてくれたのです。

“気持ちを言葉にしなくてもいい” 読み合いの時間

家庭でこの絵本を読むときも、やまあらしぼうやの表情や、お母さんの寄り添う姿にふれることで、子どもは自分の中の小さな気持ちをそっと確かめるように物語を受けとっていきます。

読んだあとに無理に言葉にしなくても、胸の奥で “あのときの悲しさ” や “誰かの優しさ” がふっと動くような絵本。その静かな変化が、自分の役を受け入れる力や、友だちの気持ちに思いを寄せる優しさへとつながっていくとわたしは信じています。

絵本紹介

『やまあらしぼうやのクリスマス』

文:ジョセフ・スレイト
絵:フェリシア・ボンド
訳:宮地敏子
出版社:グランまま社

クリスマスの劇を楽しみにしていた、やまあらしぼうや。
その気持ちに突然影が差し、胸の奥にひりりと痛みが走る。物語はそんな“幼い心の揺れ”を、とても静かに、丁寧に描き出します。

フェリシア・ボンドのやわらかな色づかいは、ぼうやの繊細な気持ちと、支えてくれる人のあたたかさをそっと包み込み、ページを追うたびに絵本の中の空気がこちらに流れ込んでくるようです。

ぼうやのそばに寄り添うお母さんの存在は、この絵本の核ともいえる優しさ。そのままの自分を抱きとめてもらえる安心感が、読む人の過去の記憶や心の痛みと静かに響き合います。

ジョセフ・スレイトの文章は、できごとを説明するのではなく、心の揺れや息づかいをすくい上げるように進みます。劇という特別な日を背景にしながらも、描かれているのは“自分らしさをどう受けとめるか”という普遍的なテーマです。

読み終えると、胸の奥に小さな灯りがともるような気持ちが残り、子どもにも大人にもそっと寄り添ってくれる一冊です。

🌿 ご購入はこちらから
この収益は、施設への贈り物絵本として活用させていただきます。

おすすめの理由

揺れる気持ちに、そっと気づかせてくれる絵本

やまあらしぼうやの「悲しい」「くやしい」「どうしていいかわからない」という気持ちは、子どもが日々の中で経験するごく自然な感情です。物語を通して、それらの感情を説明されるのではなく、「あ、これ自分の気持ちかもしれない」と、そっと見つけられるところが、この絵本の大きな魅力です。

「自分らしさ」を否定しなくていいと伝えてくれる

とげがあることで距離を取られてしまう場面は、子どもにとっても身近な出来事です。ぼうやが“自分のままでいていい”と感じ直していく姿は、無理に変わらなくてもいいという安心感を、静かに届けてくれます。

そばにいてくれる存在が生む、深い安心感

お母さんがぼうやに寄り添う場面は、家庭で絵本を読む時間そのものと重なります。強い言葉で励まさなくても、「大丈夫だよ」という気持ちが自然に伝わり、読み合いの空気をやさしく包みます。

行事や劇あそび前の、心の準備にも寄り添う

配役への期待や不安、思うようにいかない気持ちなど、行事の前に揺れやすい心を、否定せずに受け止めてくれる物語です。自分の役割に向き合う力を、そっと後押ししてくれます。

成長とともに、読み味が変わっていく一冊

幼児期にはぼうやの気持ちに寄り添い、小学生以上になると、周囲の気持ちに目を向けて読み返すこともあります。読む時期や立場によって、心に残るポイントが変わり、長く手元に置いておきたくなる絵本です。

物語の余韻に、静かに身を委ねられる

表情の変化や、お母さんの言葉のあたたかさ、そして最後に訪れる気づき。説明を加えなくても、絵と物語の流れそのものが、子どもの心に自然と届きます。読み終えたあと、静かな安心が残るところも、この絵本ならではの魅力です。

まとめ

「やまあらしぼうやのクリスマス」は、配役のドキドキや、思いどおりにならない気持ち、そして“自分でいていいんだ”と感じる瞬間を丁寧に描いた物語です。子どもたちが行事の季節に味わう複雑な気持ちを、そっと抱きとめてくれる一冊でもあります。家庭で読むときは、お母さんの言葉やぼうやの表情が、自然に子どもへのメッセージになります。劇の役だけでなく、“その子らしさ”が誰かを助けることがある。この絵本は、そのことをやさしく教えてくれます。読み重ねるたびに、ぼうやの強さとあたたかさが、子どもの心にもゆっくり広がっていく物語です。

🌿 ご購入はこちらから
この収益は、施設への贈り物絵本として活用させていただきます。
トップで絵本を探す


コメント