『めっきらもっきらどおんどおん』

子どもたちが物語に“吸い込まれる音”が聞こえた日

「めっきらもっきらどおんどおん」は、私が幼稚園や保育園で働いていた頃、いつ読んでも子どもたちの反応が劇的に変わる特別な絵本でした。読み始めると、どの子もそっと前のめりになり、ページをめくるたびに目が丸くなっていく。その瞬間、部屋の空気がすっと張りつめ、子どもたちが物語へ“吸い込まれる音”が聞こえるようでした。

怖さとおもしろさが混ざり合う、その一瞬の火花

この絵本は、ただ面白いだけでも、ただ怖いだけでもありません。
読み聞かせをしていると、笑い声が起きたかと思えば、次のページでは「キャー!」と小さな悲鳴が上がる。
さらに、心配そうに口を結ぶ子、身を乗り出して絵を確かめる子……。
そのすべてが同じページの上で生きていて、子どもたちの感情が行ったり来たりするのが、手に取るように伝わってきました。

こういう瞬間に立ち会うたび、「絵本って、子どもの心をこんなにも揺さぶる力があるのだ」と、私自身が胸をつかまれるような思いをしました。

わが子と過ごした“物語の延長戦”

園で人気だったこの絵本は、家でもやっぱり大人気でした。
近所の神社の前を通ると、子どもたちは絵本のかんたのように大声で叫んでみたり、自分たちなりの“うた”をつくって歌ったりしていました。

その姿を見ていると、絵本の世界がページの中だけではなく、子どもたちの生活そのものに溶け込んでいることがよくわかりました。

「あの世界に行ってみたい」という気持ちは、誰にも止められないような勢いを持っていて、その“想像の伸びやかさ”を目の前で見るのが本当にうれしかった。

今では、そのうたは、子どもたちが自分の世界をつくるための“合言葉”だったのだと思います。
絵本が、子どもの遊びと感情と好奇心をまるごと動かしていた、あの贅沢な時間を忘れられません。

絵本紹介

『めっきらもっきらどおんどおん』

文:長谷川摂子
絵:ふりやなな
出版社:福音館書店

主人公のかんたが、神社の大きな木のうろに向かって歌を叫ぶところから物語は動き出します。
「めっきらもっきらどおんどおん」。ちょっと不思議で、口に出すだけで楽しくなる言葉。
その声に誘われるように現れるのが、もんもんびゃっこ、しっかもっかか、おたからまんちん の三人組です。

彼らが案内する先は、どこか懐かしくて、ちょっとこわくて、思いきり遊びたくなる不思議な世界。
ページをめくるたびに、子どもたちの心の中にある“冒険したい気持ち”が自然に広がっていくようです。

ふりやななさんの絵は、光の陰影や色の深みがとても美しく、かんたの心の動きがそのまま風景に反映されているよう。
大げさな説明はなくても、ページの隅々に「物語が動いている気配」が漂い、読み手も自然と絵本の世界に吸い込まれていきます。

“怖い”“楽しい”“もっと遊びたい”
そんな子どもの感情の波が、カラフルな言葉とともにいきいきと描かれた、長く愛され続ける一冊です。

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おすすめの理由

言葉のリズムが、物語の世界へ引き込む

呪文のような不思議な言葉の響きが、子どもの耳と心を一気につかみます。意味を理解しようとしなくても、音の流れそのものが楽しく、自然と物語の中へ入っていける絵本です。

ドキドキと安心が、同時に味わえる構成

「ちょっとこわい」「でも楽しい」。その行き来が、成長期の子どもにとって大切な感情の体験になります。怖さが強くなりすぎず、最後には安心へと戻れるところが、読み合いにちょうどいいバランスです。

想像する余地が、大きくひらかれている

背景の描き込みや色づかいが、物語に奥行きを与えています。すべてが説明されないからこそ、読み手それぞれの中で、森の深さや空気の気配が自由に広がっていきます。

「自分の世界」をつくりたくなる物語

かんたが歌をつくるように、読んでいる子どもも、自分だけの言葉や想像の世界を持ちたくなります。物語を受け取るだけでなく、そこから何かを生み出したくなる力を秘めた絵本です。

繰り返すほど、楽しさが深まる

三人組の表情や動き、場面ごとの細かな変化は、読むたびに新しい発見をもたらします。一度で終わらず、何度も開きたくなるところも、読み合いの時間を豊かにしてくれます。

まとめ

『めっきらもっきらどおんどおん』は、
子どもたちの“冒険したい気持ち”をそっと押し広げてくれる絵本です。

もんもんびゃっこ、しっかもっかか、おたからまんちん。
ユニークな三人の存在は、こわさと楽しさの境界をやわらかくしてくれます。

日常の中にふいに訪れる小さなドキドキが、想像の世界を一気に鮮やかにし、子どもたちの心に“自分だけの物語”を灯していきます。

読み終えたあとにも、不思議な言葉のリズムや世界の気配が静かに残る。
そんな余韻を楽しめる一冊です。

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