『ぼちぼちいこか』

思いがけず、棚から引き寄せられた一冊

親しくお交わりのあった方とのメールのやりとりの中で、この絵本の話題がふと出てきました。
その瞬間、ずっと本棚に並んでいたはずなのに、しばらく手に取っていなかったことに気づき、自然と棚に手が伸びました。
懐かしさというより、「今、もう一度開いてみたい」という感覚に近かったように思います。

子どもの頃とは違う響き方をした娘の言葉

娘に見せると、「懐かしい」という言葉と一緒に、「今だから、もっと響く気がする」と返ってきました。
大学の自習室で毎日、目標に向かって机に向かう中で、この絵本が片隅にあったらいいのに、と言います。
やりたいことが増え、思うようにいかない日もある中で、気を張り続けなくてもいいと思える存在として、思い浮かんだようでした。

「お母さん向けの本やね」と言われて

周囲から「いつも走っている」と言われることがあります。
自分ではそのつもりはなくても、振り返ると全力で進み続けている時間が多かったのかもしれません。
娘に「お母さん向けの本やね」と言われたとき、少し笑って、でもどこか納得しました。
これからは、この絵本をそばに置いて、立ち止まることも含めて受け取っていきたい。
そんな気持ちで、もう一度ページを開きました。

絵本紹介

『ぼちぼちいこか』

さく:マイク=セイラー
え:ロバート=グロスマン
やく:いまえよしとも
出版社:偕成社

主人公は、大きな体のかばです。
働きに出て、いくつかの仕事に関わりますが、場面が変わるたびに、その場を離れることになります。
しょうぼうし、パイロット、ふなのり・・・
かばの体の大きさが、そのまま出来事の流れに重なっていきます。

ページには、短い言葉と絵が並び、出来事が淡々と進んでいきます。
かばの表情や姿勢、置かれている場所から、その場の空気が自然と伝わってきます。
読み手は、気持ちを追いかけるというより、かばの動きと間(ま)に身をゆだねながら、次の場面へ進んでいきます。

やがて、かばはとても身近で、無理のない場所に腰を下ろします。
そこに流れるのは、特別な変化ではなく、落ち着いた時間。
大きな体が、そのままの形でおさまっている姿が、静かに描かれています。

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おすすめの理由

ふっと笑って、またページを戻したくなる

かばの動きや佇まいを追っているうちに、気づけば口元がゆるんでいます。
大きな体が場面に収まったり、少しはみ出したりする様子が、読む人の視線を自然と遊ばせてくれます。
楽しさが、ページのあちこちに散らばっています。

立ち止まる場所を、そっと思い出させてくれる

日々の中で、前へ進む力は自然と身についていきます。
この絵本は、その力を緩める瞬間を静かに差し出します。
歩みの途中に腰を下ろす感触が、ページの余白から伝わり、自分の足元を確かめる時間が生まれます。

うまくいかない時間を、そのまま置いておける

物語の中で起こる出来事は、解決されるというより、次の場面へと静かに移っていきます。
その流れが、日常の中の引っかかりや、言葉にしきれない時間と重なります。
整理しなくても、棚上げにしておいてもいい、そんな感覚が残ります。

まとめ

この絵本には、前へ進むための言葉も、結論もありません。
あるのは、大きなかばが動き、場面が移り、腰を下ろすまでの時間です。
読みながら、自分の歩幅や、今いる場所を思い返す人もいるでしょう。
頑張ってきた日にも、少し力を抜きたい夜にも、ページをひらけば、視線を置ける場所が見つかります。
思春期にも、大人になってからも、その時々の自分に合わせて、そっと寄り添ってくれる一冊です。

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