やりたい気持ちは、突然生まれたものではなかった
私はこれまで、やりたいことを見つけては夢中で取り組んできました。
「次は何をしたいのだろう」・・・そんな思いが、いつも心のどこかにあるタイプです。
けれどあるときふと気づきました。
この“やりたい”という気持ちは、突然湧いてきたものではなく、これまでの人生で出会った言葉、景色、人のぬくもりが少しずつ積み重なって生まれたものでした。
若いころに出会った何気ない言葉も、忙しい日々にくれた労りも、思い返すとどれも今の私を支えている“目に見えない根っこ”のようでした。
私の心の奥にある“根っこ”に気づいた瞬間
ある日、この絵本を読み返したとき、胸の深いところにすっと手が伸びていくような感覚がありました。
春の訪れとともに目覚める子どもたち。
暗い土の中で息をひそめていた小さな命が、静かに動き始める様子。
それは、私自身の中に眠っていた記憶が、ゆっくりと息を吹き返すようでした。
これまで受け取った優しさ、励まされた言葉、見守ってくれたまなざし。
もう会えない人との時間までもが、静かに“根”となって私の中で生き続けているのだと感じたのです。
“根っこ”は誰の心にもあると気づかせてくれる絵本
この絵本を読むと、自分の中に確かにある“支え”を改めて思い出します。
目に見えないけれど、確かに存在するもの。
そして、ゆっくりでも前に進ませてくれるもの。
人生を重ねてきた方ほど、この感覚は深く響くのではないかと思います。
絵本紹介
『ねっこぼっこ』
作:ジビュレ・フォン・オルファース/訳:斎藤倫子/平凡社
冬のあいだ土の下で静かに眠っていた子どもたちが、春の訪れとともに目を覚ましていく物語。
暗い中から光へと向かっていく子どもたちの姿は、季節のめぐりだけでなく“命の力強さ”をやわらかく描いています。
オルファースの絵は繊細で、自然の色づかいがとても豊かです。
森の香りや風の音まで感じ取れそうなほど、静かな生命力に満ちています。
物語は派手ではありませんが、読むと心が自然に深呼吸するような感覚があり、年齢を問わず穏やかに受け止められる一冊です。
『根っこの こどもたち 目をさます』
作:ジビュレ・フォン・オルファース/訳:斎藤倫子/平凡社
オルファースの世界観を受け継ぎながら、日本の四季が丁寧に描かれた続編。
芽吹き、実り、落ち葉、雪など季節の移り変わりを通して、「見えないところで育まれるもの」の大切さをしみじみと感じさせてくれます。
この絵本は、過去の出会いや思い出が“今の自分を支える根っこになっている”ことに静かに気づかせてくれます。
ページをめくるごとに、心の奥に眠る記憶にそっと光が当たるような、深い余韻のある作品です。
高齢者ギフトとしておすすめする理由
自然の穏やかな世界が心を整えてくれる
鮮やかすぎない優しい色づかいが、心のリズムをゆっくり整えてくれます。
過去の思い出が“いまの支え”になっていることを思い出せる
日々の中で忘れがちな大切な記憶を、静かに呼び起こしてくれる絵本です。
“いまの自分”を肯定できるやさしさがある
年齢を重ねた自分にそっと寄り添い、前向きな気持ちを灯してくれます。
一人で読む時間にぴったりの静けさがある
言葉数が多くないため、ゆっくり味わえる落ち着いた作品です。
動かなくても、誰かを支えている存在なのだと気づける
根のように見えなくても、確かに人を支えている――そんな気づきを届けてくれます。
贈り方のヒント
季節の便りのように贈る
「芽吹きの季節に」「秋の深まりとともに」など短い一言とともに。
自然素材でラッピング
麻ひも・和紙・押し花など、絵本の世界観と相性のよい素材がおすすめ。
手書きの短いメッセージを添える
「あなたの時間がやさしく流れますように」
「思い出が力になりますように」などの一言で十分伝わります。
2冊ペアで贈る
“いのちのめぐり”が伝わる贈り方になり、受け取る方にも喜ばれます。
まとめ
見えないけれど、私たちはたくさんの“根っこ”に支えられています。
人との出会い、思い出、受け取った優しさ、そのどれもが、今の自分をそっと支えてくれる大切な力です。
『ねっこぼっこ』と『根っこの こどもたち 目をさます』は、そんな“見えない支え”を静かに思い出させてくれる絵本。
贈る人にも受け取る人にも、心にふわりとあたたかい灯りがともるような一冊です。
『ねっこぼっこ』
『根っこの こどもたち 目をさます』

コメント