『どんなにきみがすきだかあててごらん』

子育ての中で揺れていた気持ち

『どんなにきみがすきだかあててごらん』は、わたしが子育ての中で何度も読み返してきた絵本です。忙しさや不安で心に余裕がなくなり、つい強い言葉を投げてしまう日がありました。いくら大切に思っていても、思い通りに向き合えない自分が苦しくなることもありました。そんな夜、この絵本を開くと、「ごめんね」「だいすきだよ」という気持ちを、わたしの代わりにそっと子どもたちへ届けてくれるように感じたのです。

親として揺れる気持ちと向き合う時間

子どもたちと向き合う時間はかけがえのないものなのに、「今日の言い方はよくなかったな…」と落ち込む瞬間が誰にでもあります。わたしも例外ではなく、うまく気持ちを伝えられない日が続くと、いつの間にか心の奥がぎゅっと硬くなっていくようでした。この絵本のページをめくると、デカウサギとチビウサギの素直なやり取りが、そんな硬くなった部分をやわらかく溶かしてくれるようでした。「あなたがすき」という気持ちを全身で伝えあう姿に触れると、自分の中にも自然とあたたかさが戻ってきました。

寝顔を見つめる時間に戻ってくる安心

読み終えたあと、子どもたちの寝顔を見つめる時間が、静かに心を整えてくれる瞬間になりました。「今日もちゃんとこの子たちを思っていたな」と感じられる、その小さな安心こそが、子育ての中でわたしを何度も支えてくれました。この絵本は、迷ったときに親としての気持ちをそっと取り戻させてくれる、大切な一冊です。


絵本紹介

『どんなにきみがすきだかあててごらん』

作:サム・マクブラットニィ
絵:アニタ・ジェラーム
出版社:評論社

『どんなにきみがすきだかあててごらん』は、チビウサギとデカウサギが「すき」という気持ちを一生懸命伝えようとする姿が描かれた絵本です。ふたりは言葉だけでなく、手を伸ばしたり、体を使ったりしながら思いを表していきます。その様子は、親子の「伝えたい気持ち」と自然に重なり、読んでいると自分の中にもやさしい気持ちが戻ってくるように感じます。特別な出来事が起こるわけではないのに、ふたりのやり取りを見つめているだけで、胸の奥があたたかくなる絵本です。

アニタ・ジェラームの絵は、日常の中にある親子の時間をそのまま写し取ったようなやさしさがあります。色づかいは派手ではありませんが、その控えめなトーンが物語にぴったりで、ページをめくるごとに落ち着いた気持ちになっていきます。うさぎたちの表情やしぐさも細かく描かれていて、ひとつひとつの場面から「大切な存在を思う気持ち」がしっかり伝わってきます。読み手が自分の経験を重ねやすく、親子で読むと会話のきっかけにもなる絵本です。

短い文章で進んでいく物語ですが、その中には親子のやり取りで大事にしたいことがいくつも散りばめられています。子どもは自分なりの言葉や方法で気持ちを伝えようとし、親はそれを受け止めながら、自分にできる形で返していく。そんな積み重ねが、ふたりの関係をより深いものにしていくのだと感じられます。読み終えたときに残るのは、「愛情は難しいことをしなくても伝わる」という安心感です。親子で過ごす日々の中にそっと寄り添ってくれる、静かでやさしい一冊です。

おすすめの理由

親子の気持ちを素直に思い出させてくれる

「すき」という気持ちをまっすぐ伝え合う姿が、日常で見失いがちなやさしさをそっと思い出させてくれます。

読み聞かせの時間が自然とあたたかくなる

短い文章と穏やかな展開が、親子で心を寄せ合う静かな時間をつくり出します。

絵のやわらかさが心の緊張を溶かす

淡い色づかいと優しい線が、読む人の心をふっとゆるませ、安心感をもたらします。

どんな年齢の子にも寄り添う

幼児から小学生まで、どの成長段階でも「伝えたい気持ち」に応えてくれる絵本です。

大人自身の気持ちも整えてくれる

読みながら「こんなふうに伝えたい」という親の原点に静かに戻れる一冊です。

読み合いのヒント

言葉に余白を残しながらゆっくり読む

「すき」の温度が静かに伝わっていきます。

スキンシップと一緒に読むと安心感が高まる

寄り添う距離が、絵本の世界と気持ちをやさしく結びつけます。

まとめ

『どんなにきみがすきだかあててごらん』は、親子の気持ちをやわらかくつないでくれる絵本です。忙しさの中で揺れる親の気持ちにそっと寄り添い、「伝える」ことの大切さを静かに思い出させてくれます。読み終えたあとの静かな余韻の中で、子どもの寝顔を見つめる時間が、よりあたたかく感じられるようになります。迷った日、落ち込む夜、自分を責めてしまう瞬間に寄り添ってくれる、親としての心を穏やかに整えてくれる一冊です。

子どもと読み合う

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