「住む生き物のこと」を思って描かれた家に惹かれて
この絵本に出会ったとき、まず目に飛び込んできたのは、家そのものの美しさでした。
でも、ページを追ううちに気づいたのは、家のかたち以上に、住む生き物へのまなざしです。
どの家も、そこで暮らす生き物の大きさや動き、過ごし方まで想像して設計されているように感じられました。
「こんな家なら、落ち着くだろうな」
そう思わせてくれる細部に、自然と心をつかまれました。
完成したあとまで描かれている安心感
この絵本では、家が完成して終わりではありません。
家に住み始めた生き物たちの様子が、一つひとつ描かれています。
そこにあるのは、誇らしさや自慢ではなく、「ここが自分の場所」という静かな満足感。
どの生き物も、無理をしていない表情をしているのが印象的です。
住まいとは、完成した瞬間よりも、そこでどんな時間が流れているかが大切なのだと、あらためて感じました。
家族で読み合う情景が浮かんだ
新しい家を考えるとき、引っ越しや模様替えをするとき。
この絵本を囲んで、「この家、どう思う?」「ここ、好きだな」そんな声が自然に出てきそうだと思いました。
意見をまとめるためではなく、感じたことをそのまま話す時間。
住まいについて考える前に、暮らしについて話すきっかけになる絵本だと感じました。
絵本紹介
文:ジョージ・メンドーサ
絵:ドリス・スーザン・スミス
訳:木坂 涼
出版社:好学社
この絵本では、さまざまな生き物が登場し、それぞれに合った家が描かれています。
高い家、地面に近い家、動きやすさを大切にした家、身を守ることを優先した家。
どの家も、「こうあるべき」という基準ではなく、その生き物にとって無理のない暮らしから考えられています。
読み進めるほどに、家は見せるためのものではなく、生き方を支える場所なのだと伝わってくる絵本です。
おすすめの理由
数値や性能の前に「暮らし」を思い描ける
住宅展示場や住まいの店では、広さ・素材・機能の説明が中心になりがちです。
この絵本は、その前段階として「どんなふうに暮らしたいか」を自然に想像させてくれます。
説明をしなくても、ページをめくるだけで、住まいの考え方が伝わるところが魅力です。
大人も子どもも、同じ場所で立ち止まれる
専門的な言葉がなく、絵を眺めるだけでも楽しめるため、年齢を問わず手に取りやすい一冊です。
商談スペースの片隅や、キッズコーナーの本棚に置くだけで、空間にやわらかな余白が生まれます。
待ち時間を「意味のある時間」に変えてくれる
打ち合わせの待ち時間、順番を待つひととき。
この絵本があることで、ただ待つ時間が、住まいについて思いを巡らせる時間に変わります。
静かに読めて、会話のきっかけにもなる。
お店の空気をやさしく整える存在になります。
飾り方で、店の姿勢が伝わる
- 設計模型の近くに、表紙を見せて置く
- 「どんな暮らしを思い描きますか?」という一言を添える
- 子ども向けではなく、あえて大人の目線の高さに置く
この絵本を置くこと自体が、「暮らしを大切にしているお店」というメッセージになります。
まとめ
この絵本は、理想の家を示す絵本ではありません。
それぞれが、それぞれに合った場所で、満足して暮らしている姿を見せてくれるだけです。
だからこそ、読む人は自分の暮らしに目を向けます。
住まいを考えるすべての場所に、静かに置いておきたい一冊です。


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