『せっけんとけしごむ』

小さくなっていくものを、暮らしの中で見つけにくくなった頃に

せっけんが丸くなるまで使い切ること、机の上で消しゴムが小さくなること。
そういう「目に見える変化」を、最近は前ほど抱かなくなりました。
便利さの中で、使い切る手触りが薄れていく感じもあります。
この絵本を開くと、減っていく姿が、ちゃんと物語として息をしていて、忘れていた感覚が、手のひらから戻ってくるようでした。

大切にされ方が変わっていく時間を思い出すとき

最初は丁寧に扱っていたものが、だんだん雑になっていく。
そうやって扱われ方が移ろうことを、誰もが知っています。
物の話なのに、暮らしの時間や役割の変化と重なって見えてきます。
それでも心の中には、使ってきた確かな時間が残っていて、ページの小さなふたりが、その時間を連れて歩いているように感じました。

ひらいていく終わり方に、気持ちが向く

小さくなることは、終わりの合図にも見えやすい。
けれど、この絵本の行き先には、別の景色が用意されています。
新しい出会いが起き、足元の世界が急に広くなる。
「ここから先」へ続く気配が、物語の中に自然に置かれていて、読み終えたあと、未来の方に気持ちが向きました。

絵本紹介

『せっけんとけしごむ』

作:及川賢治
出版社:福音館書店

使われるうちに、小さくなったせっけんと消しゴム。
丸くなり、角が取れ、元の姿とは少し違うかたちになったふたりは、あるとき、同じ場所で顔を合わせます。

ころころと転がりながら、家の中を進んでいくと、そこには、使われなくなったものや、出番を終えたものたちが集まる景色が広がっています。
役目を終えたと思われていたものが、別の場所で、別の関わり方を見つけていく。

物語は、小さくなることを終わりとして描かず、形が変わったその先に、新しい出会いがあることを、静かに示していきます。
最後に迎えられるのは、拒まれる場面ではなく、「いらっしゃい」と声をかけられる、ひらかれた行き先です。

高齢者におすすめの理由

小さくなることを、人生の途中として描いている

せっけんも消しゴムも、使われるほどに形が変わっていきます。
その変化は、価値が減ることとしてではなく、時間を重ねてきた証として描かれています。
小さくなった先にも物語が続いていることが、これまでの歩みを抱えた読み手の時間と静かに重なります。

扱われ方の変化を、そのまま見つめられる

大切にされていた時期も、忘れられていた時間も、どちらかに意味づけされることはありません。
ただ、そういう時間があったことが、淡々と描かれています。
その距離感が、自分自身の役割や立場の変化を、安心して重ねられる理由になります。

出会いによって、行き先がひらいていく

物語の終わりに待っているのは、閉じられた場所ではなく、声をかけられ、迎え入れられる場面です。
役目を終えた先にも、別の関わり方があること。
新しい出会いが、次の時間を連れてくること。
その描かれ方が、未来をやわらかく感じさせてくれます。

贈り方のヒント

これからの景色を思い浮かべて

「この先にも、あたらしい景色が楽しめますように。」

思いがけない出会いを願って

「思いがけない出会いに、心が弾む時間がありますように。」

今日の先へ、やさしく続いて

「今日の続きが、少しずつひらいていきますように。」

未来につながる時間として

「希望の未来へ、静かにつながっていきますように。」

楽しみを残して

「この先にも、楽しみが待っていますように。」

まとめ

形は少しずつ変わっていくけれど、その先で、また新しい景色や出会いが待っている。
この絵本は、小さくなることを終わりにせず、次へとつながる時間として描いてくれます。
今日の先にも、やさしい広がりがあることを、そっと思い出させてくれる一冊です。

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