毎日のお弁当と、わたしの言い訳
娘が幼稚園に通っていたころ、お弁当の時間は、どこか気合いの入るものでした。
キャラ弁が流行り、まわりのお弁当が華やかに見える中で、わたしは早々に、自分の得意・不得意を悟っていました。
絵を描くのは苦手。
だから、おにぎりの顔だけはなんとか形にして、あとは「見た目より味」と、自分に言い聞かせながら、お弁当を作っていました。
覚えていないと思っていたこと
そのころ一緒に読んでいたのが、『おべんとうさんいただきます』でした。
幼稚園から帰ってきて、お弁当箱を開ける前のような気持ちで、娘とページをめくっていたのを覚えています。
月日が流れ、娘は大学生になりましたが、あるとき、「キャラ弁、作ってくれなかったよね」と、
ふと思い出したように話しました。
ちゃんと心に残っていたのだと、そのとき知りました。
「いただきます」を、何度も確かめる時間
この絵本は、お弁当の中身をたどりながら、命のつながりを、まっすぐに描いています。
娘と読み合いながら、「食べる」という行為の奥にあるものを、わたし自身も何度も確かめていました。
作る人、食べる人、そして、いただく命。
お弁当の時間とともに、感謝の気持ちが、静かに積み重なっていったように思います。
絵本紹介
『おべんとうさん いただきます』
作/絵:堀川 真
出版社:教育画劇
この絵本は、遠足の日のお弁当をきっかけに、食べものの来た道をたどっていく絵本です。
お弁当箱に詰められていくごはんやおかずは、そのままの姿で描かれるだけでなく、海や畑、草原といった場所へとつながっていきます。
魚や野菜、卵や肉が、それぞれどんな生きものや世界から来たのかが、絵の流れの中で示されていきます。
ページをめくるごとに、食べることと、生きることがひと続きであることが見えてきます。
絵のつながりによって、命の連なりが描かれています。
身近なお弁当という題材から、「いただきます」という言葉の重みが、自然に伝わってくる一冊です。
おすすめの理由
食べものと、いのちへのまなざしが自然に育つ
お弁当の中にある身近な食べものをたどりながら、「食べる」という行為の奥にあるものに、
静かに目が向いていきます。
感謝を教え込むのではなく、ページを追ううちに、いのちを受け取っている実感が、そっと心に残ります。
ひとつのいのちが、次へとつながっていく視点
この絵本は、目の前にあるものだけで完結せず、その先、その前へと視線を広げてくれます。
食べものがどこから来たのかをたどることで、いのちは単独で存在しているのではなく、連なりの中にあることが感じられます。
世界の見え方が、少し広がる一冊です。
見えない部分を、思い描く余白がある
すべてを説明しきらず、絵のつながりに委ねているからこそ、読んだ人それぞれの想像が動き出します。
お弁当の中身の向こう側にある風景や時間を、思い浮かべながら読む体験が、物語の奥行きを深めてくれます。
まとめ
お弁当の中にある、いつもの食べもの。
その向こうに広がるいのちのつながりを、この絵本は、静かに思い出させてくれます。
見えているものだけで終わらせず、その前や、その先に目を向けること。
「いただきます」という言葉が、少し深く胸に届く時間になります。
子どもと読み合いながら、大人もまた、食べること、生きることをあらためて感じ直す一冊です。
🤍 この絵本について、ひとこと
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短い言葉を残していただけたら嬉しいです。


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