しろくまの“表情”に、思わず声がこぼれる時間
この絵本は、なんといってもしろくまが可愛い。
「おいしいものが大好き」という言葉から始まるのも、読む人の気持ちにすっと重なって、わくわくします。
しろくまは、ただ食べものの中にいるだけでなく、包まれたり、はさまれたり、ちょこんと顔を出したり。
その一つひとつの動きが愛らしくて、見ているだけで心がゆるんでいきました。
ページをめくるたびに広がる、にこにこの連鎖
子どもたちに読んでいると、ページをめくるたびに「えー」「あそこにいた」と、思わず声があがります。
しろくまの動きに合わせて自然と体を前に乗り出すなど、思わず笑ってしまったりする姿もありました。
誰かの笑顔につられて、まわりもにこにこしていく。
そのやわらかな連鎖を感じながら読む時間が、私はとても好きでした。
しろくまのかぞくが、ふっと視界に入ってくる
物語の途中で、しろくまのかぞくも登場します。
気づくと、同じように食べものに包まれていたり、しろくまと同じ場面に、さりげなく並んでいたりします。
主役はあくまで、あのしろくま。
けれど、ページをめくるたびに、しろくまのまわりの世界が、少しずつ広がっていくのが見えてきます。
読んでいるあいだ、その広がりを追いかけるように、目が自然とページの中を動いていました。
絵本紹介
『おいしそうなしろくま』
作:柴田ケイコ
出版社:PHP研究所
たべものが大好きなしろくまが、「たべものの中に入ってみたら、どんな感じかな?」と考えます。
ごはん、おみそしる、たまごやき、にくまん、おでん。
しろくまは、思いつくままに、いろいろな食べものの中へ入ってみます。
それぞれの場面で、しろくまの体の見え方や、収まり方が少しずつ違っています。
途中には、しろくまのかぞくの姿も描かれています。
同じ場面の中に、同じように食べものに包まれた姿が並び、ページの中に、いくつかの存在が同時に置かれていることがわかります。
一冊を読み終えるころ、しろくまが思い浮かべていた「もしも」の時間を、最初から最後まで見届けたような感覚が残ります。
おすすめの理由
食べものの中に、身をあずけている姿
しろくまは、ごはんやたまごやき、うどんの中にすっぽりとおさまっています。
次に何かをしようとする気配もない。
ただ、その場にいる姿が、ページをめくっても、また次のページにも続いていきます。
食べものの形に体を合わせ、その中に静かに収まっている様子を見ていると、
時間の流れが、少しゆるやかになっていくのを感じます。
表情と配置が、目を引きとめる
しろくまの顔は、大きく動いたり、誇張されたりはしません。
けれど、どのくらい顔を出しているのか、どこまで体が隠れているのか。
そのわずかな違いが、ページごとに変わっていきます。
一度見たはずの場面でも、もう一度目を向けたくなるところがあり、視線が、自然と同じ場所に戻っていきます。
かわいさは、派手な動きではなく、そこに置かれた形そのものから伝わってきます。
変わらないたべものが、順に現れる
ごはん、おみそしる、たまごやき、うどん。どれも、長いあいだ食卓に並んできたものです。
日々の中で繰り返し目にしてきたものが、ページの中に、ひとつずつ現れます。
その並びを追っていると、昔の食卓や、誰かと囲んだ時間がふっと浮かぶことがあります。
思い出と、いま見ているページとを、行き来しながら読めるところも、この絵本の魅力です。
贈り方のヒント
絵本と一緒に添えられる、やさしい一言メッセージ
あたたかさを届けたいときに
「ぬくもりの中に、そっと身をゆだねる時間を。」
人生をねぎらいたい相手へ
「これまで重ねてきた時間が、やさしくおさまりますように。」
離れて暮らす大切な人へ
「同じ食卓を思い浮かべながら、選びました。」
感謝をそっと伝えたいとき
「たくさんの場面で、心を満たしてもらいました。」
これからの毎日に寄り添いたくて
「ゆるやかで、おいしい時間が続いていきますように。」
まとめ
ページを開くと、しろくまの姿に、思わず目がとまります。
次は何かな、とめくる時間。
見つけた、と感じる瞬間。
気づけば、同じページを一緒に見ています。
読み終わったあと、なんだかうれしい気持ちが残って、「また読もうか」と思える。
そんな時間を運んでくれる絵本です。


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